2013 Fiscal Year Research-status Report
食文化に根差した省エネ・低炭素型地域コミュニティー創生への挑戦
Project/Area Number |
25560155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大村 直人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50223954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 佐知子 神戸山手短期大学, その他部局等, 准教授 (60514916)
白杉 直子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80243294)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低炭素化 / 省エネルギー / 社会システム / 地域コミュニティ / プロセス強化 |
Research Abstract |
本年度は、調理の研究に関しては、水を媒体とした調理法のうち、「ゆでる」と「煮る」の2つの調理プロセスに着目した。まず、「ゆでる」に関しては、ゆで卵を題材に、調理時間予測モデルの構築と、このモデルに基づいたガス加熱とIH加熱の違いによるエネルギー消費および、二酸化炭素排出量の評価を行った。調理時間予測モデルでは、卵殻、卵白、卵黄の3つの層からなる2次元軸対称系を設定し、非定常熱伝導方程式に基づくモデルを構築し、このモデル式を用い、調理時の水温変化を考慮に入れて有限要素法にてシミュレーションを行った。数値計算で得られた卵内の温度の時間変化は、実際の調理実験で得られた卵内の温度変化とよく一致し、構築した調理時間予測モデルの妥当性が示された。この調理時間予測モデルを基に、卵黄内の温度が80℃に達する時間を調理完了時間として、最適加熱方法をガス加熱とIH加熱それぞれで決定し、この最適加熱法において消費されるエネルギー量と排出される二酸化炭素量の評価を調理実験により行った。その結果、IH加熱は熱効率の点で優れているものの、発電ロスや送電ロスを加味した場合、エネルギー消費量、二酸化炭素排出量ともに、ガス加熱よりも大きくなった。一方、ガス加熱においては、加熱調理時の熱効率が50%に満たず、熱効率の点で問題があることがわかった。その結果、加熱調理において、ガス加熱では調理時の熱効率の向上、IH加熱では発電、送電効率の向上が、省エネルギー、低炭素化の鍵となることがわかった。 また、地域創生に関しては、醤油などの発酵食品が日本食の特徴の一つであることから、発酵食品生産と農産物生産を組み入れたエコプロダクションシステムについて検討を開始した。発酵食品生産の前処理プロセスとして、Couette-Taylor流を用いたデンプンの連続糖化プロセスを提案し、効率よく還元糖が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、「ゆでる」、「煮る」という水を媒体とした調理において、化学工学的、エネルギー工学的に検討を行い、加熱器具の特性を明らかにするとともに、省エネルギーや低炭素化につながる加熱調理法の最適化を行ったこと、さらなる省エネルギーや低炭素化に向け、加熱器具と加熱調理法に関する課題を明らかにした。以上の点は平成25年度の計画を概ね達成するものである。また、これに加え、食感や、味のしみこみなど、家政学的、調理学的検討も合わせて行っており、この点は当初の計画よりも進展している。さらに、地域コミュニティの創生については、プロセス強化の観点から発酵食品生産において、サプライチェーンに基づく、生産から廃棄物・排水処理を含めた省エネルギー・低炭素化を行うために、まず前処理工程に当たるデンプンから連続的に糖を得るCouette-Taylor流を用いた連続糖化プロセスを提案し、その有効性を明らかにした。さらに、植物工場をハブとしたスマートコミュティの構築に向け、学内および、学外研究機関との連携体制も整いつつあり、平成26年度の研究推進に向けた準備も着々と進んでいる。上記のことより、加熱調理のうち、「蒸す」の進捗状況に、少し遅れはあるものの、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
加熱調理においては、引き続き「煮る」、「蒸す」について、化学工学、エネルギー工学、家政学、調理学の複合的観点からの考察を進めていく。また、健康・福祉の観点から、栄養についても検討していく。 つぎに、地域コミュニティの創生に関しては、食材のサプライチェーンに基づく、生産から廃棄物・排水処理を含めた省エネルギー・低炭素化を行うために、各段階でのエネルギー変換効率や輸送効率を考慮したLCA解析も行う。また、食物生産に関して、地域のスマートコミュニティ化を目指し、植物工場をハブとした植物生産ネットワークの構築を検討する。このため、社会学、経済学、システム工学の研究者と積極的な交流を持ち、意見交換を行っていく。
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Research Products
(7 results)