2013 Fiscal Year Research-status Report
マグネシウム火災に対する革新的消火概念の確立に向けた基礎検討
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25560160
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 祐二 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50303657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若月 薫 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター), 火災災害調査部, 主任研究官 (60408755)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 消火 / 火災 / 安全 / 燃焼 |
Research Abstract |
本研究では吸い込みを用いて消火をある限られた空間で達成させるという新規の革新的な消火概念の創出を目的としたものである.対象は消火が困難なマグネシウム火災であるが,まずは吸い込みで炎そのものが(消火薬剤を用いずとも)自己消失するモードが発現するか否か,発現するとすればそれはどのような物理現象によって支配されるのかを調べた.その解明に注力するため,消火対象は観察しやすく,その上,吸い込みされやすい溶融ポリマーの火災として調査を行った. 本試験のために開発された消火システムを用いて,再現性の良好な電線燃焼を対象とした小規模な実験を行い,吸い込み消火のモデル化を試みた結果,吸引による消炎では,明確に異なる2つの消炎過程が観察され(MODE IおよびII)ることが明確となった.前者(MODE I)は吸い込みにより場に形成される速度とよい相関を持ち,且つ消炎に至るまでの時間が極短いため,「吹き消え消炎」として解釈することが妥当である.一方,後者(MODE II)は消炎に至るまでの時間が長く,明らかにMODE Iとは異なる機構で消炎する.調査の結果,予熱帯での熱バランスが保てなくなって消炎に至る熱損失消炎であることが確認された.基本的に吸い込みでも噴出でも消炎に至るモードは同じであることが確認できた.ただしもちろん消炎時に発生するフュームの回収などの点では吸い込み消火の概念の方が優れることは付記しておく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
恒常的な吸引を行うためにはエジェクタ効果を用いるが,粉が混入するとエジェクタが破損してしまいため,実際にマグネシウムを用いて消火実験をするには至っていない.実験の結果,火炎中で発生する煤(微粒子)ですらエジェクタの性能を劣化させることが判明したが,流路の破損による修繕費用などに対応するため当初は想定していなかったヒータを調達してそれに対応した.加えて当初申請額よりも大幅に減額されたことにより十分な数値解析を実施することができず,被膜の生成をモデル化するまでには至っていない. とはいえ,自己消炎する際の消炎モードを特定したのは,吸い込み消火の特性を把握する上では極めて重要な知見であると認識している.もともと吸い込み法による消火概念そのものが存在しておらず,吸い込みを与えた際の消火が何に基づくものかを明確にさせなければ消火ボックス内部での消火対策をするに至らないため,この前段階に注力して成果を積み上げることには意義がある.
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Strategy for Future Research Activity |
吸い込みにより自己消火を至らしめるためのモードを特定した一方で,まだ「どのように消火モードが発現するか」という一般化に至っていない.すなわち,現在試験をしている対象物以外のものを吸い込み消火で消そうとした場合,どのモードがどの程度発現し易いのか,しにくいのかを判定できる理論的解釈を与えることが望ましい.この一般化への解釈を次年度の第一目標に据えることで「吸込み法による消火概念」の基礎をまず確立したい.同時に溶融塩の被膜プロセスの再現に必要な「冷却による固化作用」を数値モデル化し,非定常的な被膜過程を再現可能な解析手法を提案したい.本提案年度で当初の達成目標である「消火ボックス内部での消火過程」の把握をすることは,粉状の物質の影響を受けない吸引構造を導入する必要があり,試行錯誤を繰り返したとしても資金が足りず,時間も不十分である.本年度においてはその検討をしつつ,将来的には別資金を得ることで可視化が可能な消火ボックス内部での現象を把握するよう発展させてゆきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データ解析補助としての人件費(または謝金)のために使用する予定であったが,人件費をかけずともその整理が可能であったため,そのまま残余金として残された. 本事業は吸い込み消火に関するものであるが,従来の消火器による吹付け消火の現状把握,調査のための支出も加えて吸い込み消火の特徴抽出に役立てたい.この実施内容は従来の実施内容には含まれていないが,消火機構を理解するのに役立つと考え,追加して対応することにする.残余金で可能な範囲での対応のみで実施することとして,他の実施内容に影響しないよう配慮する.
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Research Products
(7 results)