2013 Fiscal Year Research-status Report
マルチエージェント・シミュレーションによる“群集リーダー”誕生の研究
Project/Area Number |
25560164
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
畠中 憲之 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70363009)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00235152)
西田 宗弘 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (10329112)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 群集行動 / 避難 / パニック / リーダー |
Research Abstract |
災害時,避難誘導員の役割はきわめて大きい.しかし,多くの場合,避難訓練のように事前に誘導員か配置されているわけてはない.本研究の目的は,パニックのような極限環境下における群集から,危険回避のため自発的に誘導員(リーダー)が出現するかどうかを明らかにすることである.本研究では,分子動力学に自律的な意思決定の要素を考慮したマルチエージェントモデルに基づく社会シミュレーションによって,この問題にチャレンジした. 本年度はまず,リーダー誕生の舞台となる極限環境下におけるパニック現象を,物理現象で知られているクラスター形成という立場からその発生機構を明らかにした. 基本的には,クラスターの形成による出口の発見確率の増加(脱出に有利)とクラスター化による出口での渋滞(脱出に不利)の競合がおこる.最大避難効率は,最適なクラスターサイズが決定され,そのもとで脱出速度が最大となる時であることがわかった.そして,そのクラスター化の背景には,個人の依存度が重要な因子で,クラスターの大きさだけでなく硬さを決めていることを明らかにした.さらに,避難時,このクラスターがあたかも一人の避難者のように振る舞うことも見いだした.このクラスターの意思決定は,避難行動を大きく支配することから,個人の意思がいかにしてクラスターの意思決定に反映されるのかを調べた.まだ途中段階であるが,基本的には多数決論理に従うことを示唆する結果を得ている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に入るまでの基礎調査が十分であったこと,ならびに高精度で大規模計算が可能なワークステーションを導入でき,ほぼ計画通り初年度の目標を達成することができた.特に,群集(クラスター)があたかも一人の避難者のように振る舞うことの発見は,個人と集団の意思決定理論の検証へあらたな展開へ導いた.一方,当初計画では,パニック回避に有効なマルチクラスター形成を調べるために,依存度の不均一性の効果を調べることになっていたが,先の追加研究により若干の遅れを生じている.ただし,シミュレーションは順調に進展しており,現在,数値計算結果の解釈を行っている段階である.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,前年度,新たに生じた課題であるクラスターの意思決定理論をさらに推進とともに,若干報告の遅れている依存度の不均一性に関する結果を早急にまとめ,計画通り,前年度の人間集団におけるクラスター形成過程の調査を踏まえ,新たに時間発展する依存度(動的依存度)のモデルを構築し,動的依存度によるリーダーの形成の可否について検討する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,本研究課題遂行のために購入予定であった洋書等の資料の一部を,電子ジャーナル等無料で入手可能な資料で代用することができたこと,また残りの資料については,シミュレーションの結果を待って適切なものを選定する必要があったことから,年度内の使用に至らなかった. 平成26年度は研究の進展に応じて適切に使用する.
|
Research Products
(1 results)