2013 Fiscal Year Research-status Report
太平洋を漂流する津波瓦礫の監視手法の開発と日本海不法投棄ゴミ監視への応用
Project/Area Number |
25560176
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Fukui University of Technology |
Principal Investigator |
青山 隆司 福井工業大学, 工学部, 教授 (60350807)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 津波瓦礫 / 海ゴミ / 衛星リモートセンシング / 衛星画像 / SST画像 / Chl-a濃度画像 / スペクトル |
Research Abstract |
平成25年度に実施予定の研究内容は、東日本大震災による津波瓦礫を監視する新たな手法を開発することである。中・低解像度衛星画像を用いた漂流瓦礫の抽出には、近赤外バンドを用いた手法が有効であることは既に公表しているが、薄い雲や海面の汚れなどが存在する場合、近赤外バンドを用いる手法のみでは困難な場合がある。そこで、SST(表面海水温)画像やChl-a(クロロフィルa濃度)画像を用いた新たな手法を併用した結果、海面の汚れと漂流瓦礫を差別化して抽出することが可能となった。具体的には、漂流する津波瓦礫が存在する地点では、周囲の海域に比べて表面海水温が上昇していること、さらにChl-a濃度が下がっていることが確認された。その理由は、太陽光を受け瓦礫の温度が周囲の海域の海水温より上昇すると考えられること、Chl-a濃度の場合は、海表面に瓦礫が存在している場合、海水中の植物プランクトンの量が計測できないためであると考えている。今後時間とともにさらに規模が小さくなる津波瓦礫を、中・低解像度衛星画像を用いて追跡することは困難であるため、視点を変えて、太平洋のゴミベルト地帯に集積すると思われる瓦礫の総量を監視することを考えていく。また、平成26年度の研究課題として考えていた日本海を漂流する不法投棄ゴミ(海ゴミ)の検出手法の開発も並行して行ってきた。日本海沿岸域の海ゴミに対しては、高解像度衛星画像が使用可能であるが、解像度1~2mのマルチスペクトル画像を用いても小規模な漂流ゴミの確認は不可能である。そこで、周囲の海域の画素と異なるスペクトルを持つ画素を抽出することで、海ゴミが含まれる画素の候補を取り出す手法の開発を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中・低解像度衛星画像を用いた漂流瓦礫の抽出には、近赤外バンドを用いた手法が有効であることを明らかにした。さらに、海面に油膜などの汚れが存在していたり、薄い雲がかかっている場合には瓦礫の判定が困難であったが、SST(表面海水温)画像やChl-a(クロロフィルa濃度)画像を用いた新たな手法を併用した結果、海面の汚れと漂流瓦礫を差別化して抽出することが可能となった。つまり、ある程度大規模な津波瓦礫を追跡する場合には、今までに開発してきた手法を用いることで十分目的を達することができる。従って、平成25年度研究計画で目指した研究対象についてはほぼ達成できたと考える。しかし、時間の経過とともに津波瓦礫は拡散し、その規模が急速に小さくなっていることから、中・低解像度衛星画像を用いる限りこれ以上の追跡は困難と考えている。そこで今後は、太平洋のゴミベルト地帯に集積すると思われる瓦礫の総量を監視する手法の開発を進めていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時の平成26年度研究目標は、衛星分光画像を用いて日本海の漂流ゴミ(海ゴミ)を検出する手法を確立することである。主に日本海沿岸に近い海域を撮影した高解像度衛星の分光画像を用いるため、小規模な漂流ゴミも検出できる可能性があると考えていた。しかし、解像度1~2mのマルチスペクトル画像を用いても小規模な漂流ゴミの確認は不可能であることが明らかになった。そこで、周囲の海域の画素と異なるスペクトルを持つ画素を抽出することで、海ゴミが含まれる画素の候補を取り出す手法の開発を現在進めている。この手法をさらに改良し、より効率的に海ごみの含まれる画素を抽出する方法を見出すことに注力する。また、研究成果は論文、学会発表などにより公開する。加えて、「実績の概要」の中で述べたように、津波瓦礫についても研究を続け、太平洋のゴミベルト地帯に集積すると思われる瓦礫の総量を監視することで、津波瓦礫の効果を検証することを考えていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付決定額が、申請額より減額されたので、申請時購入予定であった画像解析ソフト(画像解析ソフト:ENVI,地理情報システム:ArcGIS)が購入できなくなったため次年度使用額が発生した。当面の対応策としては、既存の旧バージョンの画像処理ソフトで対応することにした。 研究に必須な高解像度衛星画像の購入予定額を増やすとともに、大容量のHD、出力装置などの画像解析用PCの周辺機器の充実に充てる予定である。また、国際会議投稿用論文の英文校正費としても使用する計画である。
|