2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロピラーを実装した革新的細胞遊走性評価デバイスの開発
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25560187
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大橋 俊朗 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30270812)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 細胞遊走 / マイクロデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞遊走は組織や臓器の発達と恒常性の維持に関わる細胞の基本的な機能であり,かつ損傷治癒部位への血管新生や癌の転移など様々な疾患の発達やその治癒に関わる重要なプロセスでもある.細胞遊走は細胞運動の一形態であり,細胞が周囲の組織・組織に対して力を発生することで遊走を実現させていることからその運動メカニズムを力学的に解明することは細胞の基本的機能を理解し,さらに細胞遊走性の制御を試みる上で重要である.そこで本研究課題では,細胞遊走時における細胞の力学的挙動の詳細な解析が可能な革新的マイクロチャネルデバイスを開発することを目的とする. 昨年度はPDMS製のマイクロピラー実装マイクロチャネルデバイスの設計および製作に取り組んだ.細胞をコンフルエント状態まで培養させるために設けられた液溜め部,およびその片側に接続された細胞が遊走するための複数のマイクロチャネル(幅200 μm,高さ50 μmを予定)により構成される.マイクロチャネルは底面にマイクロピラーが組み込まれていない参照用マイクロチャネルと底面にマイクロピラーを組み込んだマイクロチャネルを設けた.典型的なマイクロピラーの寸法は高さ8 μm,直径3 μm,中心間距離 8 μmである.本年度は繊維芽細胞を用いた細胞遊走実験を行い,遊走時の経時的な牽引力変化をモニターすることができた.マイクロピラー上面を経時的に画像取得し,画像処理を用いて変位を求め,その変位から牽引力を推定した.細胞遊走時には全ての細胞が同時に高い牽引力を発生しているわけではなく個々の細胞の牽引力には周期性があること,それらは細胞間で必ずしも同位相になっていないことなどがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き,マイクロピラー実装マイクロチャネルデバイスの設計および 作製ともに順調に取り組むことができた.繊維芽細胞を用いた細胞遊走実験を行うことにより,細胞遊走時の経時的な牽引力変化をモニターする実験方法を確立できた.本マイクロチャネルデバイスの構造は,マイクロチャネルの底面にマイクロピラーが組み込まれた構造を幽しており,マイクロピラーの断面は円形断面が基本であるが,現在,楕円形断面も作成しており,基質の形状異方性が細胞遊走に与える影響を調べているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に設計・作製したマイクロピラー実装マイクロチャネルデバイスを用いて平成26年度では細胞遊走実験 を行った.細胞は遊走する際に基質に対して摩擦力(牽引力)を発生させながら前進する.したがって,PDMS製マイクロピラーはこの牽引力によりたわみを生じるため,このたわみを計測することにより牽引力を推定することができる.平成27年度は,細胞遊走実験のデータを積み重ね,細胞牽引力,細胞遊走速度など経時的に評価することで細胞遊走の力学的メカニズムを考察する.さらに,現在取り組んでいるマイクロピラーの断面を円形断面から楕円形断面にすることにより基質の形状異方性が細胞遊走に与える影響も検討する.
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