2013 Fiscal Year Research-status Report
人工呼吸関連肺炎を抑制する革新的気管挿管チューブの開発
Project/Area Number |
25560192
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鄭 雄一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30345053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下畑 宣行 立命館大学, 生命科学部, 助教 (30419709)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人工呼吸関連肺炎 |
Research Abstract |
外科手術における麻酔管理においては気管挿管が必須であるが、挿管チューブに由来する物理的・化学的・生物学的刺激は人工呼吸関連肺炎を誘発し、その医療コストは無視できないレベルにある。現存のPVC製挿管チューブに生体親和性の高いポリマーをコーティングすることで上記の刺激を低減させ、人工呼吸関連肺炎のリスクを抑えることは社会的に意義のある取り組みである。 本年度においては、コーティング剤の濃度、コーティング回数について複数条件を設定し、PVC製品にコーティングを施したものを実験に用いた。 コーティング済みのサンプルについて、XPSによって表面原子を測定することでそのコーティング効率を判定した。 また、PVC製品からの可塑剤溶出をコーティングによって抑制する効果を測定する目的で、純水にPVCチューブを浸漬し、コートの有無、および浸漬時間によって溶出する脂質の量が変化するかどうかをUV/VISを用いて測定した。さらに、液体培地を用いて同様に溶出するDEHPの量をGC-MS/MSを用いて測定した。 上記の実験の結果より、コーティング剤の最適濃度、コーティング回数、液相におけるコーティングの持続時間を求めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度においては、コーティング条件の最適化を行い、これによって以降の実験の基礎となる技術を確立できた。 条件検討の過程において、PVC製品から液相への可塑剤溶出が、コーティングによって抑制されることが明らかになった。溶液には純水および培地を用い、いずれの場合においてもコーティングのないものでは溶出物が観察されたが、コーティングを施すことで溶出をほぼ抑制することができた。 以上の結果はin vitroでの実験結果であるが、一方で今年度は上記の効果をin vivoで確認する実験系の確立には至らなかった。生体との相互反応も鑑み、in vivoでの実験系においてコーティング条件を詳しく検討・確認し、その効果を評価することが次の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において達成した、コーティングの物理的な有効性の証明に加えて、生物学的な有効性を示すことを主題とする。 in vitroの系において明らかになった、可塑剤の溶出抑制効果、および経時的な安定性について、実際の使用状態に近い生体内の系において評価を行う。 また、コーティングによって、バイオフィルム形成抑制効果、摩擦低減が期待されることから、この2点についてin vitroでの評価を行う。 上記の効果が、実際の挿管チューブの使用において人工呼吸関連肺炎の抑制に有効に働くことを示すため、最終的には動物に挿管しての評価を行う必要がある。まずは実験用小動物を用いた系を立ち上げて検討し、進捗によってはヒトと同等の麻酔手技が可能となる中動物/大動物での評価を行うことが望ましい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
進捗の遅れにより、当初予定していたin vivoにおける検討を行うことができなかったため、動物購入費として計上した額の一部を使用しなかった。 H26年度にin vivoにおける検討を繰り越して行う予定としており、H26年分の動物購入費に加えて次年度使用額を同用途に使用する計画である。
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