2013 Fiscal Year Research-status Report
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25560211
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 英俊 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (10300873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 清 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30201974)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ラマン分光分析 / ウイルス / 非破壊分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は,ラマン分光およびレーザー技術を基盤とし,ウイルスに感染した細胞のウイルス種類の判別やレーザー照射による細胞制御を可能とする技術の開発である。これまでウイルス感染後24時間で,ラマン分光分析によりウイルス感染した細胞を判別できる可能性が示されていた。 本年度は新たに導入した顕微鏡用培養装置を用い,安定した条件下で同様の実験を繰り返した結果,感染後12時間でウイルスに感染した細胞を検出できることを確認した。また,判別の指標となっているシグナルは,増殖したウイルスではなく感染された細胞自体の変化によって生じていることが示唆された。培養細胞は培養条件のわずかの差や細胞の形態によってラマンスペクトルが異なるが,ウイルス感染による変化は同等かさらに小さい。ウイルス感染の検出のため,培養条件変化に基づくシグナルを除去することにより,12時間で再現性良く検出が可能となった。 ウイルス増殖に関わるE2遺伝子産物に対する免疫染色法では,24時間で15%程度の細胞への感染が観測されたが,ラマン分光法での検出では約95%が感染していることが示唆されている。全ての細胞に5~6個のウイルスが感染する高密度な状態で実験しているため,ラマン分光法での検出が,より実際に近い感染状況を示していることが分かる。透過型電子顕微鏡観察でも,ウイルス粒子の細胞内への侵入が確認された。本成果は論文投稿しており,マイナーリビジョンの評価を得て再投稿の準備をしている。 増殖能力を持たない同種のウイルスを利用しても,感染が判別できる可能性が示唆された。今後再現性を確認する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は以下の項目の実施を予定しており,それぞれの項目について進捗状況を説明する。 1.ウイルス感染の検出:研究費の不足により2台のラマンシステムのうち1台しか利用できなかったが,当初の予定より早く論文を投稿できたことは大きな進展であった。準備段階の24時間に比較して,半分の12時間での検出が可能になった。ラマンスペクトル変化の原因が,感染された細胞の変化であることについて,初期的な結果を得ることができ,来年度の研究の方向性を定めることができた。ラマン分光法以外での方法では,電子顕微鏡観測は予定通り進めることができた。予定していた定量分析は,電気泳動によるターゲット分子の分析のための条件探査を実施しており,予定より遅れている。 2.レーザー照射によるアポトーシス誘導:早期検出と再現性の確認に集中したため,研究時間および予算の両面で実施することができなかった。785nmと532nmの光を分けるミラーと光学系が必要であるが,入手できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ラマン分光分析で,ウイルスの感染を12時間で検出できることが示された。この結果は,ウイルスの感染に対して細胞が反応することを示唆している。すなわち,本技術は免疫染色よりも早くウイルス感染を把握することができることを示しており,ヒト感染ウイルスの検出装置としての応用が期待できる。今後は異なる種類のウイルスに対する反応を調査する必要があり,その方向での実験に集中する必要がある。532nmレーザーによるアポトーシス誘導研究は,来年度に改めて挑戦する予定である。従来の分析技術を用いた定量分析は,12時間という短時間での検出がなぜ可能かを示すため,変化の検証と原因の追及を第一の目的とし,定量性の検証については来年度の後半に実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品を購入した結果,133円が残った。現在購入したい物品が133円以上の価格であるため,いったん購入を差し控えた。 133円を次年度予算と合わせて,必要な物品を購入する予定である。
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