2013 Fiscal Year Research-status Report
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25560212
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
石垣 美歌 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (60610871)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / マウス受精卵の質 / 非破壊評価 |
Research Abstract |
平成25年度は出産休暇・育児休暇の取得に伴い、11月からの研究開始となった。そのため、本申請課題の研究実施期間は平成25年度から平成27年度に変更された。そこで本年度の研究計画は、平成26年度からの本格的なマウス受精卵のラマン測定に備え、実験手法の確認や物品調達を行い、研究実施体制を整えるための準備期間となった。具体的には、マウス胚の培養技術の習得と採卵・培養に必要な器具類の調達、凍結・融解胚を用いた測定条件の検討を行なった。 まずマウス胚の培養技術習得のために、民間で実施されている「胚培養士養成講座」を受講した。本養成講座は、不妊治療の医療現場で働く胚培養士を養成するための講座である。受精卵の採卵手順や胚培養方法、凍結・融解や人工授精の手法について2日間の日程で学び、本研究課題を滞りなく実施するための技術を習得した。 次に本研究課題実施のためには、特別に調達する必要のある物品が複数ある。例えば、受精卵の採卵のためには潅流針という非常に細い注射針が必要となる。そして、採卵の際に卵管を傷つけることがないよう、針先を削る特殊加工を施す必要があり、特別に注文しなければならない。また受精卵のラマン測定を実施するためには、底面全体が石英で作られた特注のディッシュが必要である。さらに、胚培養のためは胚培養用の特別な試薬類が複数必要である。以上のように、本研究実施のためには特殊な物品が数多くあり、それらの調達を行うことで次年度から実験を本格的に開始できるよう準備を行なった。 最後に、市販されているマウス受精卵の凍結・融解胚を用いてラマン測定を行い、測定条件の検討を行なった。実際に測定を実施すると、水深レンズの挿入により受精卵が舞い上がり、受精卵を紛失してしまうなど、当初想定していなかった問題が次々と現れた。しかし試行錯誤を繰り返し、2細胞期の受精卵のラマンスペクトルを取得することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は出産休暇・育児休暇の取得に伴い、研究開始が約半年間遅れる形となった。そのため、本申請課題の研究実施期間は1年延長され、最終年度は平成27年度に変更された。そこで、次年度から本格的にマウス受精卵のラマン測定を実施するため、本年度は実験手法・実験条件の検討や物品調達を行い、実験開始のための準備期間とする計画に変更となった。 実験手法・実験条件について、まず「胚培養士養成講座」を受講し、受精卵の採卵手法や胚培養方法、凍結・融解や人工授精の技術を習得し、胚培養技術の向上を図ることができた。実際にマウス受精卵を用いて胚取り扱いの実習を受け、実技の上でのコツなどを習得することができ、飛躍的に胚培養技術を向上させることができた。 また、市販されているマウス受精卵の凍結・融解胚を用いてラマン測定を行い、実験手順やレーザーの照射強度・照射時間などの様々な条件検討を行なった。その際、顕微ラマンシステムの水深レンズを胚培養液へ挿入する際、受精卵が舞い上がり紛失してしまうなど、当初想定していなかった問題が次々と現れた。そのため、胚培養液ではなく、スクロース溶液に受精卵を入れるなど試行錯誤を繰り返し、2細胞期の受精卵のラマンスペクトル取得に成功した。 さらに、胚培養のために必要な特殊ガラス器具類や試薬類の調達も終了し、マウス受精卵のラマン測定を開始できる状況が整った。以上のことから、現在までの研究推進状況はおおむね順調であり、計画通り進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス受精卵のラマン測定を本格的に開始する。まず、交尾が確認された雌のマウスを解剖し、卵管から受精卵を回収する。受精卵はhCG(注射用胎盤性性腺刺激ホルモン)による過排卵処理したマウスや自然交配したマウスから採取する。回収した受精卵を培養し、2~8細胞期胚、桑実胚、胚盤胞へと分割が進む過程で、受精卵のラマンスペクトルを取得する。この際、顕微ラマンシステムに装着されている小型CO2インキュベータを作動させ、胚にストレスをかけることなくラマン測定を実施する。この作業を繰り返し、データ数を増やして受精卵のラマンスペクトルデータベースの作成を行う。 胚盤胞まで分割が進む胚は生存能力が高い。途中で分割が止まってしまう胚と、胚盤胞まで分割する胚の分子組成的違いを、多変量解析の主成分分析(PCA)や部分的最小2乗法(PLS)を用いて解析する。また、作成したデータベースを基に線型判別分析(LDA)を用いてスペクトルモデルを作成し、未知サンプルを適用した際の検出感度・特異度を導出し、受精卵の生存率をどの程度予測できるかを検証する。 さらに、レーザー照射による受精卵への影響を評価するために、レーザーを照射しない受精卵の培養も行う。レーザーを照射しない受精卵が胚盤胞へと分割が進む確率と、レーザー照射を行なった受精卵が胚盤胞へと分割が進む確率を比較し、レーザー照射による受精卵への影響を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題において、マウス受精卵の卵管からの採取には、潅流針という非常に細い注射針(32ゲージ注射針)が必要となる。さらに、採卵の際に卵管を傷つけることがないよう、針先を削る特殊加工を施す必要がある。この加工作業は特注で行われ、加工作業後にさらに滅菌処理を施す必要がある。これらの工程を行うために、潅流針の調達に約1ヶ月半かかり、その間マウスからの採卵を実施することができず、実験動物の発注を行うことができなかったため、当該助成金が生じた。 当該助成金は次年度のガラス器具類購入にあてる予定である。
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