2014 Fiscal Year Research-status Report
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25560212
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
石垣 美歌 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (60610871)
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Project Period (FY) |
2013-02-01 – 2017-03-31
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Keywords | ラマン分光法 / 受精卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
体外受精の成功率は“受精卵の質”に依ると言われている。本研究では、卵割の速度と形態学で卵質を評価する従来の手法ではなく、ラマン分光法によって取得した受精卵の分子組成情報に基づいて卵質を評価することを目的としている。 本年度はICR系統のマウス胚を使用し、未受精卵・前核期・2細胞期・8細胞期の初期胚のラマンスペクトルを取得した。まずチロシンダブレットのバンド強度比から、卵割が進むにつれて水素結合が強くなっており、タンパク質の2次構造が変化している可能性を示す結果が得られた。また主成分分析(PCA)の結果、未受精卵と受精卵とは大きく2つにクラス分けされており、その分類の因子はアミドI・IIIのバンドに表れるタンパク質の2次構造の違いによるもので、αへリックスからβシートリッチな構造へと変化している結果が得られた。さらに、グリコーゲンのバンドも受精後に相対的に上昇している可能性を示す結果も得られている。そして、形態学的に良質と判断される受精卵と不良胚との違いを解析した結果、不良胚では脂質の含有量が相対的に多くなっているという結果が得られた。 以上の結果から、タンパク質の構造変化や脂質の相対的含有量を、卵質を評価するバイオマーカーとして用いることができる可能性があることが示唆された。また、アミドI・IIIやチロシンダブレットの強度比、脂質の相対的強度比をマッピングすることで、受精卵の生体物質の活性化・不均一性をモニタリングできる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに順調にマウス初期胚のラマンスペクトルを取得し、データベースの作成を行うことができている。また、卵割に伴う卵内物質の変化や、良質胚と不良胚を識別するバイオマーカーの候補も多変量解析の結果から得られてきている。これらの結果を基に、最終年度には卵質評価へ持ち込むことが可能であるため、計画は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画当初は、受精卵を培養する過程でラマンスペクトルを取得する予定であったが、培養液から自家蛍光が出てしまうことや、オイル成分のバンド強度が強く出てしまうことなどの問題が生じた。そこで現在は、各卵割状態のラマンスペクトルを取得する方針に転換して研究を行っている。各受精卵の形態学的性質によって判断される卵質と、ラマンスペクトルとを対応付けて解析を行うことで、問題なく研究計画を継続していく予定である。 来年度はさらにデータベースの作成を行い、卵質の判別分析を行いたいと考えている。また計画当初にはなかった、卵内物質分布のイメージングも行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究代表者は平成27年1月~3月まで、出産のため一時的に研究を中断していた。中断期間に予定していた受精卵の実験を実施することができなかったため、この部分に充てるために計上していた予算が未使用額となり、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験動物・試薬類の購入費に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)