2014 Fiscal Year Research-status Report
血糖値センサー装着のステルス化による安全で快適な糖尿病征圧ストラテジー
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25560234
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石幡 浩志 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40261523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 洋子(岩松洋子) 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50261524)
島内 英俊 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (70187425)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血糖値計測 / CGMS / 歯周病 / 組織再生 / バリアメンブレン / スマートフォン |
Outline of Annual Research Achievements |
日本で糖尿病腎症が原因で透析療法を受けている数は10万人を超え、それに要する医療費は年間5000億円を超える。このほかにも細小血管障害に伴う網膜症、神経障害などで深刻な身体障害が惹起され、さらには糖尿病が危険因子となり、高血圧、高脂血症、肥満、喫煙など絡み合って、心疾患や脳卒中などの生命に危機をもたらすリスクを著しく上昇させる。これらに要する医療費や経済損失を総合すると、糖尿病に伴う我が国の経済損失は年間25兆円と推計される。 糖尿病の最大の発症要因は生活習慣に伴う血糖値上昇であり、これを抑える行動様式を身につけることでその発症を予防することができる。それには、自らの血糖値を数値としてリアルタイムに検知して知ることが最も効果のあるモチベーションを喚起することから、近年、これを目的とした持続的血糖値計測システム(CGMs)が保険適用された。この計測方法は腹部などの皮下に対し、計測センサー針を刺入して留置し、組織間液を対象に血糖値をリアルタイムに計測するが、体表にセンサー機器を付着させたままにする必要があり、違和感をや生活に不便を与える欠点があった。 本研究では、このCGMを口腔内に完全埋め込みにて留置した上、無線通信によってスマートフォンとの通信により、組織間液中の糖値をリアルタイムに検知するシステムの確立を目的として、その基本となる歯周組織内への電子媒体埋め込みとその動作を達成することである。歯周組織内に電子媒体を導入するには、歯周組織再生療法の外科処置の際に、バリアメンブレンを用いる機械を捉え、フレキシブルな膜状に電子媒体を配置することで、歯周再生治療に併せてCGMsを口腔内に留置することが最適である。本研究の結果、それに最適な電子基板用薄型チタンメンブレンを開発し、動物試験によってその有効性を実証した。基板の完成によって口腔用CGMの確立は容易なものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究による持続型血糖値モニタリング(CGM)は、従来のものとはコンセプトが全く異なる。従来型CGMはまさしく血糖値モニタリングを主目的に適用されるもので、健保適用対象は糖尿病の既往のある患者に限定されている。しかしこの適用のあり方は全くといっていいほど無意味と言わざるを得ない。本来CGMによる血糖値コントロールを行うべきは、すでに糖尿病を発症した患者よりもむしろ予備軍なのである。血糖値の変動を意識する機会は、それまでは自分の血糖値を把握していなかった予備軍にとっては極めて有意義であろう。糖尿病予備軍がCGMを利用することで、その糖尿病発症の抑止する動機づけが得られ、その多くが糖尿病への境界前で踏みとどまることができる。一方、既に血糖値のコントロールが困難な糖尿病に進展した状態でCGMを適用する事はいわば泥縄の対応と言えるのではないだろうか。ならば、CGMの適用を、その多くが糖尿病予備軍である歯周疾患有病者に適用することで、それらが糖尿病へ越境することが防止できる機会となる。 糖尿病予備軍へのこのようなCGMの予防的適用の効果は最も望ましいとはいえ、実際のところ患者の立場からは、その理由のみでCGMを受け入れる決断をするのは躊躇するだろう。現状のCGMは多少なりとも生活に影響するし、導入時には多少の苦痛も伴う。従って、CGMを糖尿病発症抑止のために活用し、かつそれを患者が抵抗なく受け入れる手段を開発する入り口戦略こそが、その開発において極めて重要であると見られるのである。 本研究の成果により、歯周再生治療の機会に口腔内に血糖値計測機器を導入する手法が開発出来たので、その普及のハードルが下がったと言える。現在のCGMSセンサー機器は極めて小型化されているから、バリアメンブレンとしてのチタン膜に付加するのは容易であり、早急な臨床応用による実用化が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔内埋め込み型本来の開発目的である、糖尿病予備軍への利用を図るため、開発した歯周再生治療用チタンメンブレンを利用した計測センサーモデルを作製、ビーグル犬を対象に、顎骨に対する埋め込み試験を行う。麻酔下にて小臼歯部を抜歯し、歯肉弁を形成、骨欠損窩洞を形成、β-TCP骨補填材を窩洞に充填した後、開発した電子媒体基板用チタンメンブレンにて被覆し、歯肉弁を復位し縫合整復する。組み込んだチタンメンブレンの生体への適合性を確認するため、術後動物を4ヶ月間にわたり飼育し、口腔粘膜上における異常の有無を確認する。チタンメンブレンの生着については、安楽死の後、チタンメンブレン埋入部を含む顎骨部の組織標本を作製し、人工骨による骨再生効果への影響を評価する。 チタンメンブレンへの血糖値計測システムの組み込みについては、その実証モデルとして、既存の血糖値計測装置を解体してセンサー部分を取り出し、チタンメンブレンに付加した後、上記の方法に準じて動物の歯肉下にこれを埋設する。一定期間の飼育後に顎骨標本を摘出して組織標本を製作し、宿主組織に対する影響を評価する。 異常の実験によって得られた、歯周組織埋設型血糖値計測システムの臨床応用を達成するための諸課題について、実際のヒト口腔内に対する実現を図るための解決策を検討、実用モデルの仕様を策定し、次世代型血糖値モニタリングシステムのプロトタイプモデルの製作原案とする。
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Causes of Carryover |
本研究は順調に進捗し、既存の体内埋め込み型血糖値センサーを使用し,これを体内に留置するのに必須となる,組織間液通過能を有する新規超薄型バリアメンブレンを完成するに至っている.現在,ビーグル犬の顎骨における,新規材料の埋殖実験を進捗中であり,開発品の臨床応用を見据えた埋殖手術および埋殖後における経過観察期間に半年程度を要することから,それに必要となる消耗品および資料収集の旅費等が未執行となっている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
体内埋め込み素材を実用化するための非臨床試験に準じた動物実験において使用する動物,薬品および開発品の製作・改良に要する費用および,試験・評価方法について歯周組織再生治療および血糖値計測に関する専門家より助言を得るための出張費に未使用顎を充てる.
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