2014 Fiscal Year Research-status Report
血液脳関門標的化バブルリポソームによる脳実質組織への超音波核酸デリバリーシステム
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25560240
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
根岸 洋一 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50286978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 教夫 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (50318193)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 集束超音波 / 血液脳関門 / バブルリポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度計画では、核酸搭載型バブルリポソーム(BL)の調製と脳内核酸導入を検討した。バブルリポソームの構成脂質として、DPPC(中性脂質)、DPPG(アニオン性脂質)およびPEGを用いて調製した。2種類の基本脂質を用いて調製したバブルリポソームをマウスに尾静脈内投与し、その後の生体内(脳内)での安定性を超音波診断装置にて調べた。頭蓋内への診断造影の結果、DPPCを用いた場合と比較し、DPPGを基本脂質としたバブルリポソーム(AnBL)は、数分間にわたり、造影効果を示したことから、AnBLは、脳内デリバリーにおいて有用な超音波造影剤であると考えられた。実際にAnBLと集束超音波(HIFU)照射併用法による脳内への遺伝子導入効果を有するか検討した。方法としてルシフェラーゼ遺伝子をコードした発現プラスミドDNAと共にマウス尾静脈内へと投与し、その後、脳内へとHIFU照射したところ、照射部位における顕著な遺伝子発現の増強が認められた。一方で、更なる遺伝子導入効率の向上を目指し、AnBLへのプラスミドDNAとPEIの複合体(ポリプレックス)の搭載を試みた。その結果、粒子径100 nm以下のポリプレックスがAnBLに搭載可能であることが、フローサイトメトリーの解析により示された。また、AnBLへのポリプレックス搭載の有無に関わらず、造影能を維持できることも判明した。次に遺伝子導入効果をin vitro実験系にて検討したところ、Naked pDNAとBLとの超音波併用時と比較して、ポリプレックス搭載AnBLでは、約5倍程度の遺伝子発現レベルの上昇が認められた。以上のことから、AnBLは、生体内で安定な脳内核酸デリバリーツールとなりうるものと期待された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標として、バブルリポソーム(BL)と集束超音波(HIFU)照射併用法による脳内遺伝子導入システムを確立し、更なる遺伝子導入効率の向上を目指した。種々の検討結果から、バブルリポソームとHIFUを利用することで、脳内への遺伝子導入が可能であることが示された。更に生体内で安定な脳内核酸デリバリーツールとして期待されるポリプレックス搭載AnBLの作製に成功した。以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度計画では、BBB標的指向性バブルリポソームを開発し、それを利用した核酸・遺伝子導入システムを確立し、その有用性を評価する。 1)BBB標的指向性バブルリポソームの調製 - BBB標的指向性バブルリポソームを作製するため、BBB構成細胞の特異的リガンドペプチドを用いて、平成26年度の検討により最適化されたバブルリポソームの表面修飾を試みる。調製したリポソームの標的指向性に関して、脳毛細血管内皮細胞や神経芽腫細胞を用いて、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーにより評価する。 2) BBB標的指向性バブルリポソームの脳内挙動の評価 - BBB標的指向性バブルリポソームの脳内挙動を明らかにするために、蛍光ラベル化したBBB標的指向性バブルリポソームを実験動物へと静脈内投与後、BBBに集積しているか否かをin vivoイメージングシステムおよび蛍光顕微鏡にて調べる。また、診断用超音波プローブを用いて、脳内へのバブルの集積性について、評価する。結果を踏まえ、集積性の向上を図る。 3) バブルリポソームとHIFU照射併用による核酸導入法の確立 - BBB標的指向性バブルリポソームへのレポーター遺伝子や成長因子(GDNF等)遺伝子をコードした発現プラスミドや蛍光ラベル化siRNAやアンチセンスオリゴをPEIやカチオン性ペプチドを用いて、DPPGを基本脂質としたバブルリポソーム(AnBL)へと搭載する。こられを実験動物の脳へと集束超音波照射を行い、その導入領域をin vivoイメージングシステムおよび蛍光顕微鏡にて生化学的、組織学的に検証する。同時に組織障害性についてもHE染色等により検証し、導入システムの最適化を行う。以上より、脳疾患治療に有用な脳実質組織への新規遺伝子・核酸デリバリーシステムを確立する。
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Causes of Carryover |
研究計画は、ほぼ予定通り進み、アニオン性脂質含有バブルリポソーム(AnBL)へのプラスミドDNAとPEIの複合体(ポリプレックス)の搭載に成功し、それを利用した遺伝子導入実験系を確立した。しかしながら、ポリプレックス搭載バブルリポソームの十分なin vivoでの遺伝子導入能を検証することができなかったため、その分の試薬代が未使用額となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用計画として、ポリプレックス搭載バブルリポソームと集束超音波併用による遺伝子導入実験、さらには疾患モデルへの治療用遺伝子導入実験を行う予定である。その進捗を図るために、その分の試薬と実験動物に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)