2013 Fiscal Year Research-status Report
脳血管障害後の残存ニューロンに発現する可塑的変化の解析
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25560257
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三谷 章 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50200043)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 可塑性 / 脳梗塞 / 機能回復 / マルチユニット / 微小電気刺激 |
Research Abstract |
片麻痺などの脳血管障害後遺症からの機能回復の仕組みを明らかにすることを目的として、ラットの右(あるいは左)前肢の運動を司る左(あるいは右)一次運動野内の前肢領域に光血栓法を用いて脳梗塞を作製した後、①リーチ動作の機能回復過程の行動観察と②その機能回復がどの脳領域の残存ニューロンの代償によって生じているのかについてマルチユニット活動記録法を用いて検索した。 その結果、①脳梗塞作製後に麻痺した前肢が徐々にリーチ動作を回復することが観察された。特に、麻痺肢にリーチ動作強化訓練を行った動物では機能回復は顕著であった。このことは、リーチ動作強化訓練などのリハビリテーションが前肢のリーチ動作のような巧緻性の高い運動機能の回復に効果があることを示している。②マルチユニット活動記録を梗塞巣反対側の一次運動野で行ったところ、リーチ動作に関連する運動野ニューロンの活動が記録された。このことは、一次運動野が同側前肢の運動を司るようになったことを示唆しており、ラットでは通常観察されないことである。梗塞巣反対側一次運動野の残存ニューロンの可塑的変化がリーチ動作のような巧緻性の高い運動機能の回復に関与している可能性が示唆された。 そこで、この現象を確認するために、リーチ動作機能回復後の梗塞巣反対側一次運動野を微小電気刺激して、同側前肢の運動が誘発されるかどうかを観察するという追加実験を行った。その結果、シャム手術のみを施したコントロール群および脳梗塞後訓練をしなかった非訓練群と比べて、訓練群では梗塞巣反対側一次運動野の微小電気刺激によって明らかにより多数の同側前肢の運動が誘発されることが観察された。このことは、前肢領域に生じた脳梗塞後に、梗塞側の反対側運動野の残存ニューロンが可塑的変化を起こし、同側前肢の運動を代償し、前肢のリーチ動作のような巧緻性の高い運動機能を回復させていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記述したように、当初計画されていた脳梗塞後の運動機能の回復過程観察のための検討モデルの確定および残存ニューロンの活動記録が予定通り達成された。さらに、微小電気刺激を用いた可塑的変化についての確認追加実験も進展的に行った。これらのことから本研究は順調に成果を得ており、来年度はより発展的な研究の展開が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前肢領域の脳梗塞後、梗塞側の反対側運動野の残存ニューロンが示す可塑的変化を明らかにする目的で以下の実験を行う。 ①初年度に得られたデータの蓄積を行う。②可塑的変化を示した神経回路がどのようなニューロンネットワークを形成しているかについて、biotinylated dextran amineなどのトレーサーを用いて形態学的に検索する。③観察されたニューロン局所回路の機能的活動を検索するために、細胞内電位記録法・染色法を用いて電気生理学的および神経解剖学的にニューロン局所回路の働きを解析する。 以上の結果をもとに、前肢運動機能を司る大脳皮質一次運動野の損傷後に反対側運動野において残存ニューロンによって新たに形成される神経回路とその機能を明らかにする。 さらに、これらの実験によって得られた結果を取りまとめ、脳血管障害後の身体障害からの機能回復の仕組みを考察し、効果的なリハビリテーション介入法の開発のための基本的原理について成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マルチユニット記録のためのテレメーター装置の開発が、当初計画していたよりも短期間で完成させることができた。そのため、その開発試行のために予定していた主たる必要支出経費である動物費、テレメーター電子部品費などを節約できた。 上記のように予想していたよりもテレメーター装置の開発が短期間で達成できたので、来年度はより多くの動物を用いてより多くのテレメーターを作製して研究をさらに発展させることができる。その経費に使用する。さらに、得られた経費と時間を利用して可塑的変化を示す神経回路を単一ニューロンレベルで解析することが可能となった。この実験実施には、単一ニューロン活動解析用の実験用物品を購入することが必要であるので、その経費にも使用する計画である。
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