2015 Fiscal Year Annual Research Report
非利き手でも施行できる二重課題の開発:分配性注意障害の臨床検査として
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25560267
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
豊倉 穣 東海大学, 医学部, 教授 (20217566)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 注意障害 / 二重課題 / 分配性注意 / リハビリテーション / 感度 / 特異度 / カットオフ値 |
Outline of Annual Research Achievements |
既報告の二重課題Aに対して,上肢の運動障害に影響されにくい新たな二重課題(以下,課題B)を作成し,昨年度その判定基準を検討した。今年度は課題Bと他の神経心理学的検査所見との比較を行い,症例対象数を増やしてその意義を追加検討した。対象はADLが自立しているものの,症状や社会生活上の問題から注意障害が示唆された60歳未満の脳障害者58名(脳外傷,脳卒中など)(年齢18~59歳,平均42歳)である。課題B の成績を昨年度報告した基準に従って判定し,CAT(標準注意検査法),仮名ひろいテスト,WAIS-IIIなど他の神経心理学的検査所見の成績と比較した。注意障害の検査として一般的に行われているCATの下位課題のうち処理が複雑な一部の検査では5名の患者が実施困難であった。これに反して課題Bは全ての被検者で容易に実施することができ,広い臨床適応性が示された。しかもその感度は85%と全てのCAT下位検査(29~80%)および仮名ひろいテスト(57%)を凌駕していた。すなわち,課題Bは単純な処理で完了できる内容のため,施行が容易であるにもかかわらず,二重課題化することで特異度を落とさず高感度を呈していた。課題Bの正常群,異常群間に年齢差は認めなかった。WAIS-3のPIQ,CAT下位検査の視覚抹消テスト「3」「か」の所要時間,SDMTの達成率は正常群が良好な成績を呈した。これらの知見は課題Bの妥当性を示唆するものと考えられた。さらに課題Bの検査特性を明らかにするために,課題AおよびCAT下位課題成績を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った。その結果,課題Bの成績は同じ二重課題Aの成績に大きく依存することが判明した。CAT下位課題とはほとんど関連が見られれず,CATとは別の注意機能を反映していることが示唆された(平成28年度発表予定)。
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