2013 Fiscal Year Research-status Report
着用者に歩き方を教える履物の提案―高齢者に安全な歩行を『知覚・学習させる』履物―
Project/Area Number |
25560290
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
長谷川 正哉 県立広島大学, 保健福祉学部, 講師 (10382376)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | インソール / 動作指導 / 学習 / 歩行 / 高齢者 / 転倒予防 |
Research Abstract |
本研究課題では足底感覚刺激を用いて動作指導を支援する新たな履物を提案し,その効果検証を実施している。平成25年度には足底感覚刺激を行う突起の形状や素材の選定を行うとともに,突起の設置箇所が歩行に与える影響について運動学的・運動力学的な検証を加えた。 まず,突起の形状および素材は塩化ビニールで作製された円柱(先端は半球形)およびポリウレタン素材で作製したインソールを使用した。突起部分とインソール部に硬度差を設定することで荷重量に応じて突起が出入りする構造を検討した。これにより遊脚期には突起による刺激がおこらず,立脚期かつ荷重時においてのみ刺激が発生し,荷重量に応じて刺激強度が増減する構造を試作した。着用者の主観においても痛みや違和感はなく,また刺激入力が断続的に発生することで急激な閾値の上昇を抑制できたものと考える。なお,塩化ビニールは健康サンダルに用いられる素材,ポリウレタンは通常の履物に用いられる素材を使用しており人体に対して無害である。 次に,突起を前足部,中足部,踵部に配置し運動学的・運動力学的な検証を加えた。三次元動作解析装置を用いた検証では,踵部の突起着用時において踵接地の足関節背屈モーメント,足関節背屈角度,歩幅,トゥクリアランスの上昇を認めた。また,片側のみに突起を着用していたにもかかわらず,両側の歩幅や足関節背屈角度,トゥクリアランスが上昇しており,予測的な姿勢制御や左右の対称性を維持するための身体機能が賦活されたものと考える。 一方,足底圧計測装置を用いた歩行動作の検証では,突起の設置箇所の方向に足底圧中心軌跡が誘導された。また突起の配置箇所を前足部に設定することで足底圧中心の移動速度も増加することが確認できた。そのため,本研究で試作したインソールが荷重方向や荷重ポイントを指導する際の一助になる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度には,足底刺激を行う突起の形状や素材の選定を行うとともに,突起の設置箇所が歩行に与える影響について運動学的・運動力学的な検証を加えることを計画しており,上記2点の検証を完了した。また,機器の使用方法の熟達,インソールの突起の配置位置についても詳細な設定を行い,次年度以降の研究に向けた準備が完了した。 上記二つの検証の経過については,Duna社(イタリア),広島化成株式会社(福山市)および日本義肢装具学会にてプレゼンテーションを行い,関連分野の研究者とディスカッションを交えることができた。また,日本理学療法学術大会にてセレクション演題に採択され,2014年5月に発表予定である。 なお,イタリアではバランスコースに参加し,知覚,認知側面とバランスの関係について,当該研究分野に関するトピックスおよび国際的動向を把握し,国内外の研究者との交流を深めた。 これらの活動に加え,本年度は荷重量に応じた刺激が発生する機構を検討しこれを試作した。次年度以降の研究に試作品を用いて検証実験を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究成果については日本理学療法学術大会にて発表予定である。さらに25年度の研究成果について,得られた結果がより強固なものであるかを確認するため,追試を行う。 また,研究の進捗にあたり,二点の課題が発生している。一点目として突起に対して注意を配分する必要あることから,歩行動作自体の難易度が上がっている可能性がある。 二点目として,運動学的・運動力学的なパラメーターが増加しているため,負荷量が増加している可能性がある。本研究課題は高齢者を対象としていることから安全性に対する検証が重要であり,当初計画に加え上記二点について検証を追加する。 これらの検証終了後に当初計画通り,高齢者を対象とした着用実験を行い,健常者で得られた成果と比較・検証を進める。また,インソールの着用が動作指導と運動理解に与える影響について口頭指示のみの場合との比較を行い,足底感覚刺激が動作指導および運動の理解に与える影響について調査していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験消耗品のカタログ価格と実売価格に差が生じたため 平成25年度余剰直接経費330円と平成26年度直接経費600,000円を合わせた600,330円を以下のように使用する計画を立てている(1)消耗品費として・・・足底圧センサ200,000円,(2)国内旅費として・・・日本理学療法学術大会100,000,JAFTセミナー東京100,000(3)実験謝金・・・100,000(4)その他・・・論文掲載料,論文収集費100,330円
|
Research Products
(3 results)