2013 Fiscal Year Research-status Report
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25560292
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
樋口 正法 金沢工業大学, 先端電子技術応用研究所, 教授 (50288271)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / 脳・神経 / 計測工学 / 情報工学 / アルゴリズム |
Research Abstract |
本研究は、脳波(EEG)や脳磁図(MEG)などの脳神経活動信号を用い、複数の音から聴きたい音を聞き分ける能力(選択的聴取能力)を支援する装置を開発することを目的とする。平成25年度はその中核技術である脳情報解読技術、すなわち脳が今何を聞いているのかあるいはどの音に注意しているかを読み取る技術について主にMEGを用いて検討を行った。これまで音源の場所的な違 いによる音源分離の効果を取り除くためモノラル音を用いていたが、本年度はステレオ音を用い音源の場所的な違いが加わった場合の検討を行った。具体的には、2つの音をそれぞれ左方および右方から聞こえるように左右の耳に重みを付けて提示し、一方の音に集中しているときのMEGを計測した。その結果、注意している音に対して、その方向と対側半球にあるセンサのコヒーレンス値の増加がみられた。被験者はトーンバーストを用いた聴性誘発磁場計測においていわゆる対側優位タイプであり、注意している音に対して対側の聴覚野の反応が増加したものと思われる。さらに朗読音の場合、注意している音が左側の音であっても同側すなわち左半球のコヒーレンス値も比較的大きかった。モノラル音での考察同様、言語野の在る左半球にコヒーレンス値の増加が見られたと思われる。これらの結果より音源位置が異なる音を聞き分ける際に、音像的違いを手掛かりに音を聞き分けていることを示す脳神経活動的結果が得られた。また、朗読音声のミックス音に対しては言語的手がかりも関与していることが示唆された。以上の研究成果を原著論文および学会発表にて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主にMEGを用いて脳情報解読技術の高精度化を行うことを目標とした。その結果先に述べたような研究成果を得る事ができ、概ね順調に進展していると考えている。ただし、近年の世界的な液体ヘリウム供給不足により年度後半においてMEGを停止せざるを得なかった。再稼働時のMEGシステム校正装置としてキャリブレーションコイルを設計し、本研究費を用いて試作した。これによりMEGの運転状況に応じて実験を実施できるようになった。また、次年度実施予定であったEEGによる脳情報解読技術の再評価について一部前倒しで研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
MEGによる評価実験に関しては、依然液体ヘリウム調達状況が不安定なため、稼働しているタイミングに合わせて効率よく実験を実施する必要がある。そのためにはこれまで行った実験データの見直しを行い、本研究目的達成のために必要な課題整理や解決方法を検討しておく必要がある。蓄積された実験データはかなり膨大な量となっており、詳細検討にはある程度の時間と情報処理技術が必要である。このようなデータ解析作業に加えて、次年度は脳情報解読技術を組み込んだ実証システムを構築し、実際に脳信号によって聞きたい音を強調する装置を試作する。本実証システムには、計測した脳信号をリアルタイムに処理し、その結果を外部に出力するためのリアルタイムデータ処理機能が必要である。これを実現するためにADボード、パーソナルコピュータからなる開発プラットフォームを構築する。なお、脳信号計測装置は実用性を考慮しEEGを用いることを計画している。成果の一部は国際生体磁気学会(Biomag2014)にて報告を行い、広く意見交流を行うとともに今後の研究開発に活用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MEGはその稼働のためにの液体ヘリウムが必要であるが、近年の世界的な液体ヘリウム供給不足により年度後半においてMEGを停止せざるを得なかった。そのとき使用予定であった液体ヘリウム費を次年度MEG稼働時に使用する。 本年度残った研究費と合わせてMEG稼働用液体ヘリウムの購入に一部使用する予定である。その他として、聴覚機能支援装置の実証システム構築に必要な電子機器やコンピュータ周辺装置の購入を予定している。これまでの研究成果の報告と世界的な状況を調査するため国際学会(カナダ:Biomag2014)への参加予定しており、そのための旅費として50万円の使用を予定している。
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