2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘム代謝調節による分子レベルでの疲労制御法の開発と疲労抑制メカニズムの解明
Project/Area Number |
25560366
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小川 和宏 金沢大学, 医学系, 准教授 (30344659)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘム代謝 / ヘム / 疲労 / アドリアマイシン / ドキソルビシン / 抗癌剤 / 心毒性 / 酸化的ストレス |
Research Abstract |
金沢大学附属病院での高度先進医療「カフェイン併用化学療法」の臨床試験で、若年女性の悪性腫瘍除去手術が成功し、画像診断で遠隔転移を認めなかったが、手術前の抗癌剤アドリアマイシン(別名ドキソルビシン)投与で心臓機能が大幅に低下していたところへ、手術後に更にアドリアマイシンとカフェインの併用投与を行い、その投与中に容態が急変して、11日後に心不全で死亡した(2010年3月2日死亡、16歳)。 アドリアマイシンは致死性の心臓毒性を持つため使用には細心の注意が必要であることは、この死亡前より、研究代表者が金沢大学の医学部1年生や3年生などに講義してきたが、酸化的ストレスがその毒性発現メカニズムの1つと報告されている。そのため、この毒性発現とその前段階(心臓に潜在的な負荷)の状態は、酸化的ストレスによる一種の疲労モデルにもなるため、アドリアマイシン心臓負荷動物を用いて、ヘム代謝を制御する物質が心臓毒性を抑制できるかを調べた。 その結果、ポリアミンが経口投与でもアドリアマイシンによる心臓毒性を軽減したので、2014年2月3日に「心臓保護薬」として特許出願した(特願2014-31097、発明者および出願人:小川和宏)。これは、この簡便な方法が、臨床上大きな問題であるアドリアマイシンの心臓毒性を軽減することに加えて、スポーツや日常生活での酸化的ストレスによる心臓の疲労・消耗を抑制できる可能性を示唆している。 今回見出したこの毒性抑制法について、応用へ向けた更なる検討と、他の疲労モデルでも疲労・ストレスを抑制するかや、毒性軽減メカニズムの解明などへも発展させたい。 この他、関連研究で2008年に特許出願した「原虫感染症治療又は予防薬」について追加調査を行って特許庁での審査や審判を進め、2014年3月28日、特許権を取得した(特許第5505679号、特許権者:小川和宏、発明者:小川和宏ら3名)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化的ストレスなどで心臓にダメージを与える抗癌剤アドリアマイシンによる金沢大学附属病院での若年患者急死の情報を得て、文献調査を行った結果、アドリアマイシン心毒性モデル動物が疲労と共通する部分があることが分かった。そのため、当初は細胞実験から動物実験に移行する順番を予定していたところ、アドリアマイシン心臓負荷動物を、酸化的ストレスによる疲労モデルの1つとして用いて、動物実験を先行させた。 その結果、ヘム代謝を制御する物質によって、アドリアマイシンによる心毒性が軽減できることを見出すなどの成果を得た。 従って、酸化的ストレスによる臓器障害の軽減法の1つを見出したと言え、細胞実験と動物実験の順序は当初の予定とは異なるものの、目的に沿って概ね順調な成果を挙げていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は細胞実験から動物実験に移行する予定であったところ、初年度は上記の通りその順序を逆にする形での進行となったが、酸化的ストレスによる臓器障害軽減法を見出すという成果を挙げた。今回見出したこの毒性・疲労軽減法について、応用へ向けた更なる検討を進めるとともに、他の疲労モデル動物における疲労・ストレス抑制機能との異同や、細胞レベルでの毒性軽減メカニズムの解明などへも発展させたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先述した通り、当初計画の順番とは逆に、動物実験を先行させて細胞実験を翌年度以降に回したため、細胞実験用の高価な試薬等の支出が今年度はなくなり、次年度使用額が生じた。 実験の順番を逆にした細胞実験に使用するのが基本的な予定ではあるが、今年度の動物実験により既にin vivoで酸化的ストレスによる臓器障害を軽減する方法を見出すという成果を挙げたため、細胞実験よりも動物実験の追加へ回した方がより効率的に目的を達成できそうかも検討し、国内外の他グループの成果発表状況も見ながら、どちらへより優先的に使用すべきかを判断して、目的達成のためにより効率的と考える実験方法および実験の順番で進めていきたい。
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Research Products
(1 results)