2013 Fiscal Year Research-status Report
がんカヘキシーの骨格筋萎縮におけるオートファジーの解明と運動による改善
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25560375
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
安納 弘道 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80258392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 骨格筋 / オートファジー / 悪液質 / 担癌 / 骨格筋萎縮 |
Research Abstract |
近年、様々な骨格筋萎縮誘発条件下にある骨格筋萎縮進行過程において、オートファジーが活性化することが報告されている。しかしながら、癌悪液質誘発性骨格筋萎縮とオートファジーの関係に関する研究は極めて少なく、未だ一致した見解は得られていない。そこで本研究では、ヒトの直腸癌をマウスに移植したヒト異種担癌モデル(Human to mouse xenograft model)を確立し、癌悪液質における骨格筋萎縮進行過程とオートファジーの関係について免疫組織学的手法を用い検討した。担癌モデルは、直腸癌患者より採取した癌組織をNOGマウスへ移植し一定期間通常飼育した。癌組織移植後、生着していない動物を対照群として用いた。実験期間終了後、腓腹筋を摘出し凍結切片作製の後、オートファゴソームマーカーであるLC3とオートファジー基質として知られるp62の発現について免疫蛍光染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。また一部の試料に対しLC3とp62又はLAMP1の免疫蛍光二重染色を行い、両者の局在について検討した。担癌マウス群の腓腹筋では、筋線維内に数多くのLC3免疫陽性反応が認められ、その反応は微細な点状又はリング状を呈していた。また、LC3免疫陽性反応数は、対照マウス群に比し担癌マウス群の腓腹筋において有意に増加していた。この傾向はp62免疫反応においても認められた。また免疫蛍光二重染色では、一部の免疫陽性反応において、LC3とp62の共局在が認められた。この傾向は、LC3 とLAMP1の免疫蛍光二重染色でも認められた。これらの結果は、オートファジーが癌悪液質における骨格筋萎縮進行過程に関与する可能性を強く示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌悪液質における骨格筋萎縮進行過程とオートファジーの関係に関する研究報告は極めて少なく未だ一致した見解は得られていない。また、ヒトの癌をマウスに移植するヒト異種担癌モデルを確立し分子生物学的手法を用い取り組んでいる研究も希である。本研究では、担癌マウスにおける癌悪液質誘発性骨格筋萎縮進行過程とオートファジーの関係について比較検討するため直腸癌患者より外科的に摘出した癌細胞をNOGマウス腋窩に移植し、実験期間終了後、体重測定の後、麻酔下においた動物より腓腹筋を摘出し、筋重量の測定を行った。担癌マウスはコントロールのマウスに比し体重/腓腹筋重量とも著明な減少を示した。体重においては担癌後約7.8%の体重の減少が認められ、筋重量では約14.3%の減少が認められた。これらの結果から本研究においてHuman to mouse xenograft modelが確立され、担癌マウスでは悪液質誘発性骨格筋萎縮が誘発される可能性が示唆された。 一方、筋重量測定後凍結切片を作製し、担癌マウス腓腹筋におけるLC3とp62及びLAMP1の発現及びについて免疫組織学的手法を用い検討したところ、担癌マウス群の腓腹筋では、筋線維内に数多くのLC3免疫陽性反応が認められ、その反応は微細な点状又はリング状を呈していることが明らかとなった。また、LC3免疫陽性反応数は、対照マウス群に比し担癌マウス群の腓腹筋において有意な増加が認められた。この傾向はp62免疫反応においても認められた。更にLC3とp62の免疫蛍光二重染色では、担癌マウス群の腓腹筋においてLC3とp62の共局在が認められ, また一部の免疫陽性反応ではLC3とLAMP1の共局在が認められた。これらの結果から、癌悪液質環境下における骨格筋萎縮進行過程においてオートファジーが関与する可能性を強く示唆するものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、本研究では癌悪液質時における骨格筋萎縮進行過程とオートファジー の関係について免疫組織学的手法を用い検討しLC3とp62の共局在を認めている。また、LC3 とLAMP1の免疫蛍光二重染色では、一部の免疫陽性反応において共局在が認められたことから、骨格筋萎縮進行過程において筋細胞内のオートファジー分解過程が活性化している可能性が窺えた。しかしながら、癌悪液質時に誘発される骨格筋萎縮過程においてオートファジーを誘導する因子は明らかにされていない。そこで本研究では、多種の臨床情報付き癌細胞を移植したマウスから採取した骨格筋において、オートファジー関連因子(LC3,ATG-9,ATG-5,ATG-16,ATG-12)と癌由来の炎症性サイトカイン(IL-1,IL-6,IL-8,TNF-α)の発現について免疫組織化学法、western blotting 法、in situ hybridization法、リアルタイムPCR法を用い検討する。更に、悪液質時における骨格筋について、レーザー蛍光顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いるCLEM法によりオートファジー関連因子と炎症性サイトカインの超微細構造における局在関係について検討し、癌由来のサイトカインが悪液質時における骨格筋のオートファジー誘導に与える影響について明らかにする。これらの結果より癌悪液質の誘導・抑制因子を同定し、癌悪液質の指標を明確化する。また、臨床情報付き担癌動物において種類の異なる癌によって癌悪液質の発症や進行度のデータ整理を行うとともに、癌悪液質の発症と骨格筋萎縮が、癌細胞の種類により両者の発症や進行過程に影響を与える可能性について検討する。
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