2014 Fiscal Year Research-status Report
がんカヘキシーの骨格筋萎縮におけるオートファジーの解明と運動による改善
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25560375
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
安納 弘道 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80258392)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 悪液質 / 骨格筋 / オートファジー / 担癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪液質は、癌や慢性心疾患、慢性腎疾患、AIDS、敗血症等で誘発される複雑な代謝性疾患である。特に癌悪液質では、化学療法や放射線治療の治療効果を阻害するだけでなく予後不良となり、患者の QOL を著しく低下させることが示されている。癌悪液質は、著しい体重の減少によって特徴づけられ、この症状は主に骨格筋の著しい萎縮に依存するものとされている。骨格筋萎縮は筋タンパクの異化作用亢進によるものであり、萎縮進行過程においてユビキチン‐プロテアソーム経路及びオートファジー経路の関与が報告されている。近年、様々な骨格筋萎縮誘発条件下において、オートファジーの活性化が報告されている。しかしながら、癌悪液質誘発性骨格筋萎縮とオートファジーの関係に関する研究は少なく未だ一致した見解は得られていない。そこで本研究では、ヒト由来の直腸癌を継代可能な免疫不全マウス(NOG)系統5種類を用い、骨格筋萎縮とオートファジーの関係について検討した。移植後3ヶ月時点で、腓腹筋を摘出し4% パラホルムアルデヒドにて浸漬固定し、オートファゴソームマーカであるLC3とオートファジー基質であるp62について免疫蛍光染色を行い共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。対照と比較して担癌マウスでは体重・筋重量の有意な減少が認められた。担癌マウス筋線維内には、多くの点状又はリング状を呈するLC3陽性反応が認められ、その数は対照に比し有意に増加した。また、p62陽性の点状構造も担癌マウス筋線維内に認められ対照より多い傾向を示した。さらに、その多くはLC3陽性構造と共局在を示した。これらの結果は、オートファジーが癌悪液質における骨格筋萎縮進行過程に関与する可能性を強く示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、担癌マウスにおける癌悪液質誘発性骨格筋萎縮進行過程とオートファジーの関係について比較検討した。担癌マウスはコントロールのマウスに比し体重/腓腹筋重量とも著明な減少を示した。これらの結果から本研究においてxenograft modelが確立され、担癌マウスでは悪液質誘発性骨格筋萎縮が誘発される可能性が示唆された。担癌マウス腓腹筋におけるLC3とp62及びLAMP1の発現及びについて免疫組織学的手法を用い検討したところ、担癌マウス群の腓腹筋では、筋線維内に数多くのLC3免疫陽性反応が認められ、その免疫陽性反応数は、対照マウス群に比し担癌マウス群の腓腹筋において有意な増加が認められた。この傾向はp62免疫反応においても認められた。LC3とp62の免疫蛍光二重染色では、担癌マウス群の腓腹筋においてLC3とp62の共局在が認められ, 一部の免疫陽性反応ではLC3とLAMP1の共局在が認められた。一方、電子顕微鏡所見では、担癌マウス骨格筋において著明に膨張した筋小胞体や異常に肥大したミトコンドリアが数多く認められた。また免疫電顕的手法を用い、LC3及びp62の検出を行ったところ、担癌マウス骨格筋線維内において陽性反応と思われる所見を得ることができた。これらのことから、本研究では担癌モデルを確立し、癌悪液質誘発性の骨格筋萎縮進行過程にオートファジーが関与する可能性が示唆され、担癌マウス骨格筋の超微形態まで観察できていることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、癌悪液質誘発性の骨格筋萎縮進行過程にオートファジーが関与する可能性が示唆された。しかしながら、癌誘発性悪液質が骨格筋線維内でオートファジーを引き起こすメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では、担癌マウスを用い癌由来炎症性サイトカインや成長因子/オートファジー関連因子に対する中和抗体を用い、癌悪液質誘導因子とオートファジー誘導因子の関係について免疫組織化学法やwestern blotting 法、免疫電顕などの手法を用い検討する。これらの結果により、癌誘発性悪液質誘発性の骨格筋萎縮の改善策やその指標を見出す可能性が考えられる。また、癌誘発性悪液質誘発性の骨格筋萎縮を改善することは、癌患者の治療効果及び癌患者のQOLを向上を図ることが期待できる。これらのことから、担癌マウス骨格筋の筋再生能力を検討するため、担癌マウス骨格筋に物理的刺激を与え筋分化誘導因子の発現について検討し筋再生能力とオートファジーの関係について免疫組織化学法やwestern blotting 法、免疫電顕などの手法を用い検討する。
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Causes of Carryover |
購入予定試薬が、研究計画時より安価になっていたため。 購入した抗体の品質が高く、抗体を高濃度で使う必要がなく大量に購入する必要がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな検討事項に必要な抗体の購入に使用する。
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