2013 Fiscal Year Research-status Report
『予防犯罪学』の開拓をめざした子どもの被害防止ツールキットの実証実験
Project/Area Number |
25560395
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
原田 豊 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 部長 (10356206)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 修 東京大学, 空間情報科学研究センター, 研究員 (80401305)
雨宮 護 東京大学, 空間情報科学研究センター, 助教 (60601383)
冨尾 淳 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10569510)
齊藤 知範 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 主任研究官 (10392268)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 予防犯罪学 / 被害防止 / 地理空間情報 / 衛星測位 |
Research Abstract |
公共空間における子どもの犯罪被害防止の取り組みを客観的データに基づいて進める手法を実用化し、現場の人々のもとへ届けることを目的として、先行研究で開発した子どもの被害防止ツールキットを発展させ、子どもの日常生活空間のなかの危険個所などを調査する実証実験を実施した。 平成25年度は、小学生の被害防止を目的として地域の危険個所を点検する活動などの現場に同行し、ツールキットのプロトタイプを試験運用して、参与観察の手法でその状況を記録するとともに、聴き取り調査によって、使用者の主観的観点からのツールキットの問題点やニーズの所在を解明した。 その結果を踏まえ、とくに使用者からの要望の強かった、GPSデータの直接読み込み・写真の撮影地点の自動判定機能を新たに実装した、ツールキットの第2バージョンを作製し、平成25年10月に、研究成果公開用のウェブサイトで無償公開した。また、これを活用した地域の安全点検の効果的な実施手法について検討し、その結果を、(1)最初のまちあるきで、地域の問題の「改善計画マップ」を作る、(2)一定期間後に再度まちあるきして、「問題解決マップ」を作る、(3)改善状況を検討し、「PDCAサイクル」として継続する、(4)年配者と若手との役割分担で、後継者育成をはかる、の4項目に整理して論文発表するとともに、公開講演会などによって、研究成果を取り組みの現場に還元した。 さらに、現在のGPSの欠点である、大都市部のビル街などで測位精度が低下する問題の克服をめざして、平成25年7月に発足した「高精度衛星測位サービス利用促進協議会」に、アドバイザリーボードの1人として研究代表者が参加し、準天頂衛星初号機「みちびき」を用いた社会実証実験を平成26年3月に実施して、本研究のツールキットを、今後、準天頂測位衛星システムに対応させるための準備作業に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、平成25年度は、現在のツールキットのプロトタイプの、防犯活動の現場などでの試験運用により、主として基礎的データの収集に努め、次年度のブラッシュアップのためのソフトウェア設計と試作システムの開発までを行う予定であったが、これらの予備的作業が当初計画よりも速やかに進み、被害防止の取り組みの現場からも、早くツールキットを使いたいとの要望が寄せられたため、当初は平成26年度に実施予定であったツールキットのアドイン開発を、予算の前倒し執行により、平成25年度中に実施した。これによって機能強化したツールキットの第2バージョンを、平成25年10月に無償公開し、その後の試験運用は、この新バージョンを用いて実施できたため、従来以上に実運用に近い形で、その可用性・有効性を検討することができた。 また、計画段階では想定していなかった、わが国の純国産衛星測位システムである「準天頂衛星測位システム」の利活用促進の動きが急速に進み、平成25年7月に「高精度衛星測位サービス利用促進協議会」が発足し、研究代表者が同協議会のアドバイザリーボードの1人として参加することとなったため、当研究のツールキットをこの新システムに対応させることをめざし、同協議会に利用実証テーマ「自主防犯活動の実環境下における準天頂システムの測位精度改善効果の検証」を提案して採択され、準天頂システムの実証実験専用の受信端末の貸与を受けて、平成26年3月から防犯活動の現場での実証実験を実施中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、初年度の調査を継続するとともに、初年度に機能強化した被害防止ツールキットの試験運用をさらに進め、そこから得られた知見を集約・検討して、被害防止活動の現場での運用に要する人的・金銭的コストをモニタし、実用化に向けて克服すべき課題とその解決策を解明する。あわせて、ツールキットを現場の取り組みに実際に用いるための手順を詳細に示した手引き書を作製する。 さらに、ツールキットの有効性を検討するために、Webサーバで統合・可視化したデータを、複数の地域防犯活動主体が参加する場で提示して、地域の問題の共通理解形成の促進効果を評価する。 これらと並行して、準天頂衛星初号機「みちびき」による測位精度改善効果の検証実験を各地で実施し、本研究のツールキットの準天頂システム対応化を図るための基礎的データを収集する。 平成27年度は、初年度・第2年度に実施した調査・分析およびシステム開発の結果を踏まえ、実用化に向けた課題と解決策の解明を行う。具体的には、システムの試験運用を通じて、ツールキットの運用コスト、利用者支援の仕組み、地域行政・民間事業者との連携手法などを検討し、実用化に向けた課題を明らかにする。あわせて、本ツールキットを準天頂システム対応とするための要件についての検討を進め、その結果に基づいて「高精度衛星測位サービス利用促進協議会」の場などでの提言を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助員による資料整理・データ入力などの作業を平成25年度は行わなかったため。 平成26年度の研究補助員による資料整理・データ入力の経費、ならびに平成26年度から新規に研究分担者となる山根由子への研究費分配分に充当する。
|
Research Products
(13 results)