2013 Fiscal Year Research-status Report
海綿二次代謝産物生産を担う共生微生物の同定とゲノム解析
Project/Area Number |
25560399
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
脇本 敏幸 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (70363900)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 海綿共生微生物 / Theonella / Discodermia |
Research Abstract |
本研究では伊豆半島、伊豆諸島沿岸に生息するTheonellidae科の海綿類について生物活性物質の生産を担う共生微生物を特定し、そのゲノム解析を試みる。八丈島産Theonella swinhoeiにはポリケタイドやペプチド類などの特異な構造を有する生物活性物質が数多く単離報告されている。細胞分画を駆使してそれらの生産を担う海綿共生微生物の探索を進めた結果、光学顕微鏡下観察可能なフィラメント状バクテリアを候補微生物として単離した。ドラフトゲノム解析の結果、このバクテリアがTheonella swinhoei由来の生物活性物質の生合成遺伝子をコードしていることが明らかになった。この新規バクテリアをEntotheonella factorと同定し、新たにTectomicrobia門を提唱した。 さらにDiscodermia属の海綿類においても同様のフィラメント状バクテリアが観察されており、伊豆半島産Discodermia kiiensisを採集後、密度勾配遠心法を用いて細胞分画し、同バクテリアを精製し、次世代シークエンサーを用いたゲノム解析に供した。その結果、やはりペプチド、ポリケタイドなどの数多くの二次代謝産物の生合成遺伝子クラスターをコードしていることが明らかになった。代謝産物の不明な遺伝子クラスターも複数存在することから、メタゲノムマイニングによって代謝産物の探索を行った。その結果、新規リポペプチドを見出すことに成功した。現在構造解析を進めている。また、calyculinやcalyxamideなどの細胞毒性物質を含むDiscodermia calyxにおいても共生菌の分離後、ゲノム解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本近海に生息するTheonellidae科の海綿Theonella swinhoeiについて物質生産を担う共生微生物のゲノム解析に成功した。本研究成果は海綿由来の多種多様な生物活性物質が、ある特定の微生物によって生産されていることを初めて明らかにした成果である。海綿由来のペプチドやポリケタイドなどの二次代謝産物が共生微生物によって生産されていることが長年疑われてきたが、本研究成果によって初めて遺伝子レベルでの証明が達成できた。未培養ではありながら、物質生産に極めて秀でた新規微生物群が海綿動物に共生していることが明らかになった。 また、同様にTheonellidae科に属するDiscodermia属においても共生微生物のゲノム解析が進行しており、特にDiscodermia kiiensisについてはorphanな生合成遺伝子クラスターが複数見出され、その1つについてメタゲノムマイニングに成功した。さらにDiscodermia calyxにおいても、同様にメタゲノムマイニングを進め、新たにペプチド化合物を見出す事に成功している。このようにTheonellidae科の海綿類においてはEntothonella属の共生微生物が物質生産を担っている可能性が強く示唆されてきており、解析の糸口を掴むことが出来ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、海綿動物の中でも尋常海綿綱、イシカイメン目 (Lithistida)、Theonellidae科に属する海綿類はポリケタイドやペプチドなどの生理活性物質の宝庫であることが知られており、特にTheonella属やDiscodermia属の海綿からは数百種を超える二次代謝産物が単離、構造決定されている。多様な二次代謝産物の生産という視点に立った場合、Theonellidae科の海綿類は他の海綿と比較して明らかに突出している。したがってTheonella属やDiscodermia属が属するTheonellidae科の海綿類の二次代謝産物産生機構を明らかにすることは多様な海綿由来生物活性物質の生産機構の包括的な理解に繋がると考えられる。しかしながら、Theonellidae科以外の海綿類においてもhalichondrin Bなどの重要な生理活性物質が存在することから、今後は他の海綿種における解析を進める必要がある。しかしながら、Theonellidae科と異なり、Halichondria okadaiiなどの海綿類は必ずしも形態的に特徴のあるバクテリアが存在しておらず、光学顕微鏡下、バクテリアの単離を進める事は困難であった。このような海綿類に対して如何にして二次代謝産物の生産菌を特定するか、その方法論を開拓する必要がある。
|
Research Products
(17 results)
-
[Journal Article] An environmental bacterial taxon with a large and distinct metabolic repertoire2014
Author(s)
M. C. Wilson, T. Mori, C. Rückert, A. R. Uria, M. J. Helf, K. Takada, C. Gernert, U. Steffens, N. Heycke, S. Schmitt, C. Rinke, E. J. N. Helfrich, A. O. Brachmann, C. Gurgui, T. Wakimoto, M. Kracht, M. Crüsemann, U. Hentschel, I. Abe, S. Matsunaga, J. Kalinowski, H. Takeyama, J. Piel
-
Journal Title
Nature
Volume: 506
Pages: 58-62
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-