2013 Fiscal Year Research-status Report
光受容蛋白質を利用した光活性化小分子の開発と生物応用
Project/Area Number |
25560403
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00444563)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光照射 / PYP / 光構造変換 |
Research Abstract |
光照射により構造変換する分子は、生体機能を解析する化学ツールとして極めて魅力的である。今日、実用化されているものの多くは紫外線(紫光)(300~400 nm)照射を必要とし、細胞損傷や組織の光透過性が低いなどの問題があり、より長波長の光で構造変換できる分子が求められている。そこで、本研究では、光受容蛋白質Photoactive yellow protein(PYP)を利用することで、可視光励起により構造変換する分子の開発に取り組んだ。PYPは、紅色硫黄細菌由来の小蛋白質であり、桂皮酸誘導体をリガンドとしてCys69とチオエステルを形成し共有結合する。PYPリガンドである桂皮酸誘導体は、通常は紫外光を吸収するが、PYPに結合すると可視光を吸収する。この性質を利用して、PYPに結合したとき可視光により構造変換し、PYPから解離する光変換分子を設計・開発した。 光変換分子を有機合成しHPLCで精製した。分子の同定は、NMRおよびMSにより行った。次に、暗条件及び青色光照射時において光変換分子の蛍光スペクトルを測定したところ、青色光照射した試料の方が暗条件における試料に比べ蛍光強度が高いことが判明した。更に、PYPと光変換分子を反応させ複合体形成を行うと、青色光照射した複合体の試料の方が非照射試料に比べ蛍光強度が高かった。また、その蛍光強度は、光変換分子単独のときよりも高いことが明らかとなった。このことから、光照射によって分子構造が変換し、PYPとの結合によってその効率が向上していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予測したとおり、光変換分子は、PYPと複合化させることで、青色光照射による光変換効率が向上していることが明らかとなった。このことから、PYPの効果により、可視光変換することのできる分子の創製に成功した。このように、当初の研究目的は、達成されており、概ね研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
PYPは、変異を導入することにより、クロモフォアの吸収波長の変化を引き起こすことができることが知られている。そこで、更なる光変換分子の吸収の長波長化を目的として、PYPの変異体を作成する。また、光変換効率を考慮に入れて更なる分子構造の最適化を目指すとともに、光変換による機能変換が可能な分子設計を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に、光構造変換可能な構造を有する分子を設計し開発していたが、開発の過程で、PYPの存在下で当初の設計指針よりも効果的に構造変換する分子の設計原理を見つけた。この結果、分子の再設計が必要となり、来年度に分子を有機合成しより再検証をより精密にする必要が生じ、そのための経費が必要となった。このため、次年度に経費の使用額が生じた。 新たに設計する分子の合成のための試薬の購入に600,000円、分子の精密な評価に吸収スペクトルを測定する予定であり、そのための紫外・可視分光計の購入に1,600,000円、評価に必要な生化学試薬の購入に208,840円、成果発表のための学会参加に要する旅費として200,000円を支出する予定である。
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