2013 Fiscal Year Research-status Report
高反応性官能基を用いた低分子化合物のレセプター同定と環境探査への試み
Project/Area Number |
25560415
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 慎一 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30415260)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 分子間相互作用 / 脂質 / 生体分子 / 共有結合 |
Research Abstract |
生命は遺伝子に直接コードされる核酸やタンパク質と、間接的にコードされるあるいは環境から取得する低分子化合物やイオンがモジュールとしてはたらき、それらが複雑に相互作用することにより成り立つ。そこでモジュール間の相互作用を包括的、かつ動的に検出することが生命の理解の基盤となる。タンパク質間相互作用については、出芽酵母などのモデル生物において、網羅的なタグ融合型タンパク質の発現とアフィニティー精製により複合体を取得し、質量分析計によるタンパク質の同定を行うことで包括的なネットワーク構築が試みられている。しかし低分子化合物の相互作用を包括的に検出することは絶対的な方法論が無いために現実的ではなく、普遍的な方法論の開発が望まれている。本研究では5-sulfonyl tetrazole(5-ST)などの反応性官能基を用いて低分子化合物が相互作用する分子を共有結合で標識化する方法論を開発し、低分子化合物のレセプター分子および周辺に存在する分子の効果的な同定方法の確立を目指す。 初年度にはまず、(i)脂質をリガンドとしたプローブを設計・合成し、5-STをプローブ分子に組み込み、その生細胞における標識化能を検討した。するとリガンド依存的な膜タンパク質の標識化が検出された。(ii)合成したプローブの反応点を確認するためにプローブをいくつか合成し、標識化能を検討したところ、目的としていた5-STではなく偶然プローブ分子に組み込まれていた官能基Tがその原因である可能性が示唆された。当初の目的としていた官能基ではないが、リガンド依存的な標識化に成功したことから、次年度は官能基Tによる標識化のメカニズムと拡張性を調査する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では5-sulfonyl tetrazole(5-ST)などの反応性官能基を用いて低分子化合物が相互作用する分子を共有結合で標識化する方法論を開発し、低分子化合物のレセプター分子および周辺に存在する分子の効果的な同定方法(LiDEL法)の確立を目指している。この目的の達成にまず必要なのは、生細胞で特異的な標識化を可能にする反応性官能基の存在である。研究開始当初にはプローブ分子に組み込む5-STがリガンドのレセプターや周辺に存在する分子と共有結合することを想定していたが、5-STではなく別な官能基Tを用いて同じ目的が達成できそうであることを見出した。LiDEL法の確立のためには、結果論ではあるが反応性が高すぎる5-STよりも偶然に見出した低い反応性しか示さない官能基Tの方が良かったのかもしれない。ただ、官能基Tについては全く予備的な知見をもっておらず、次年度にはその反応性から調べていく必要がある。また、リガンド依存的な生細胞中での標識が検出されており、初年度の成果は本研究がおおむね順調に進行しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成25年度において、官能基Tによるリガンド依存的なタンパク質の標識化に成功した。平成26年度には、官能基Tによる標識化のメカニズムと拡張性を調査する予定である。 まずメカニズムについては、(i)試験管内での官能基Tの反応性と(ii)生細胞中での反応機構の解明をすすめる。前者では、生理的条件下では安定と思われる官能基Tの反応性を調べるため、過激な条件で反応性を検討する。生細胞中では求核性の側鎖を有するアミノ酸から官能基Tが攻撃されている可能性があるため、各種の求核性官能基を用いて試験する。後者については、リガンドと官能基Tを結ぶリンカーの長さや種類、リガンドの構造活性相関を検討する。最も修飾効率の高いプローブを用いて、修飾部位を生化学的に決定する。 次に拡張性については、レセプターが未知の化合物を含めて、現在設定している脂質分子以外のリガンドについて官能基Tを導入したプローブ分子を設計・合成し、標識化の選択性や効率を試す。低分子化合物とレセプターとの相互作用の安定的な検出と、脂質分子という超基本的な生体構成低分子をモデルとして、流動性が高くマルチターゲットな低分子化合物と生体高分子間の相互作用を包括的にとらえるための基盤技術の構築を目指す。
|