2013 Fiscal Year Research-status Report
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25560437
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高島 一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究グループ長 (90357351)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳活動 / 乳酸 / グルコース / 膜電位イメージング |
Research Abstract |
本研究は、脳賦活化の指標という観点から、乳酸を全脳的に経時計測することに挑戦するものである。本年度はまず、脳内乳酸動態を従来と比べて極めて高効率に解析できる、新しい単離全脳実験系を完成させた。本実験系により、脳神経活動の膜電位イメージングを行いながら、同時に30秒に1回の時間分解能で乳酸濃度を連続計測することが可能となった。この結果、脳への電気刺激を繰り返して脳賦活化を行うと、全脳が産生する乳酸量が逐次的に増え、脳活動量と乳酸産生量の間に正の相関が認められるという結果が得られた。この実験結果は、脳内乳酸計測で脳活動量を推定するという本研究の基礎にあるアイデアを支持し、今後につながる意義の大きい成果と考えられた。次に、脳灌流液の温度を制御することにより、脳温を変化させる実験を行った。この結果、脳温を上げると脳の自発的なニューロン発火が増えるにも関わらず、全脳が産生する乳酸量に変化がないという結果が得られた。この実験結果については、脳が乳酸産生量を変化させるのは、情報処理を行う脳機能現象(=あるニューロン集団の同期的発火により、一瞬にして大量のエネルギー需要が発生する状況)時のみであり、脳の恒常性の維持(=安静時の細胞膜電位の維持や、自発発火活動亢進による脳の内部状態の遷移)では乳酸変動は生じない、という可能性を示唆するものと解釈された。さらに、現在、脳灌流液中のグルコース濃度を操作する実験を開始したところである。脳灌流液中のグルコース濃度を低下させると乳酸産生が増えることが観測されたが、グルコース濃度を基に戻すと乳酸産生もベースラインに戻る場合と、戻らない場合があり、血糖値操作の乳酸産生への影響が一過性であるか履歴効果を持つものであるのか検証実験を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を達成するために必要となる、脳神経活動と乳酸の全脳計測を同時にリアルタイムで行うための新しい実験系の確立に成功した。その後、本実験系を利用し、(1)脳活動量と乳酸産生量の間に正の相関があること、(2)脳温が乳酸産生に影響しないこと、を実験的に確認することができた。さらに、(3)血糖値操作時における乳酸応答についても実験データの蓄積が進んでおり、研究計画は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在解析途中にある、血糖値操作と乳酸応答の関係を明らかにした後は、当初の計画通り、以下の3つの課題に取り組む。(1) 脳活動レベルと乳酸レベルの間の相関を定量的に示す。(2) 脳活動をトリガーとして起こる乳酸応答の時間特性を解析する。(3) 脳内の乳酸代謝に関し、脳部位依存性があるのかどうかを明らかにする。このうち、(3)に関しては、面形状を有する新しい酵素電極試作品を入手しており、評価実験の準備を開始した。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、脳灌流液を、乳酸計測を行うバイオセンサ装置に送り込むために必要なオンラインサンプリングユニットの購入を計画していた。しかし、サンプリングユニットの装置仕様(測定対象物質の濃度変化範囲やサンプリング時の流速)を決める予備実験を進める段階で、予想以上に実験データの収集と解析が進んだため、予備実験環境ではあるものの、研究本来の目的である実験データ取得作業の方を優先させた。この間は、オンラインサンプリングユニットの代用としてペリスタポンプとマニュアルのオフラインインジェクションで対応した。しかしながら、オンラインユニットは実験効率上必須であり、現時点では装置仕様も確定したことから、次年度に導入して研究を加速することにした。 初年度、装置仕様が確定せず、導入が遅れていたオンラインサンプリングユニットの購入に充てる計画である。
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Research Products
(1 results)