2013 Fiscal Year Research-status Report
ミクロネシア女性たちのオーラルヒストリーで辿る「南洋伝道団」の遺産の再構築
Project/Area Number |
25570021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
李 恩子 関西学院大学, 国際学部, 准教授 (50580586)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジェンダー / 自立的主体 / ミクロネシア / 南洋伝道団 / 植民地主義 / 宗教政策 / 宣教師 |
Research Abstract |
2013年度はこの領域の先行文献が少ないにもかかわらず、二年目に向けての基礎的資料(史料・聞き書きを中心に)を収集することができた。本研究の根幹の一つである南洋伝道団が送られた背景としての当時の海軍の一次史料を得ることが出来たことは研究の方向性を決定づける大きな成果である。この一次史料を基に書いた論文は2014年5月「日本フェミニスト・宣教センター」にて発表する。この発表に先立って、2013年5月に「ジェンダー・エスニシティ・キリスト教/宗教研究会」で委任統治領への日本人宣教師について発表した。 本研究の当該地である現在のミクロネシア連邦でのフィールドリサーチは聞き書きも含めて、委任統治時代からの日本との関係とそのレガシー、とりわけ南洋伝道団の残したものを知る上で実存的で具体的な見識となった。更に委任統治時代の国家の宗教政策を検証するために、日本人宣教地が入島する前キリスト教の影響を知るため、当地のアメリカンボードから派遣された宣教師の古文書は限られていたものの少し収集することができた。しかし、この作業はこの地域に対する史料が極めて限られていることの再確認のようなものであったが、予測通り極めて少ないということを知り得たことは本研究を進めていく上での課題と限界を見極めるのに有効であった。 本科研の主要テーマであるミクロネシアの女性たちの自立的働きと関連して多くの女性たちが「出稼ぎ」に行っているハワイでのフィールドリサーチは本研究のスコープの時空的広がりとその繋がりの発見として本研究の方法論を考える上で多くの示唆を得ることができた。とりわけ、ハワイ在住のマーシャル諸島から移民してきている女性たちからの聞き取りはミクロネシア連邦だけではなく委任統治領の範囲であった他の島々における日本統治時代のレガシーも検証できた。これは今後の研究枠組にとって、貴重な視座になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
入手困難と思われていた一次資料を収集することが出来た為、仮説の全貌が見えてきた。またフィールドリサーチ先であるミクロネシア連邦、及びハワイに住むミクロネシアの人々が思いがけなくも調査に協力的であった為、聞き取りをスムーズに進めることが出来たことにより、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
二回に亘るフィールドリサーチはそれぞれが極めて短い期間であったためランダム的聞き取りで終わった。しかし、2014年度は可能であればもう少し、長期間滞在し、多くの女性から記憶と体験を分類化あるいは体系化して聞き取っていきたい。とりわけこの地の人々はオーラルヒストリーの伝統のため聞き取りを中心に歴史の再構築をするほかないためである。 前回の聞き取りからわかったことで、やはり太平洋戦争の記憶が大きいということがあった。そこで、その時代に渡った、沖縄人や朝鮮人の経験とつなげて調査する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フィールドリサーチにかかる旅費を現地の協力者の配慮により安い予算で抑えたため、当初予定していた旅費に未使用額が生じた。 南洋伝道団が行ったミクロネシア連邦だけではなく、他の旧委任統治領への調査のための出張旅費に充当する。
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