2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25580004
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊佐敷 隆弘 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (50274767)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 分析的形而上学 / 存在の謎 / 検証原理 / 論理実証主義 / カルナップ / 存在論 |
Research Abstract |
3年計画の初年度である今年度は,(1)分析哲学における存在論の現状を明らかにすることと,(2)検証原理の歴史をたどることが目標であった。 (1)存在論に関しては,「なぜ無ではなく,何かが存在するのか」という問題(「存在の謎」)について検討した。まず,「存在の謎」を哲学史上初めて提起したライプニッツの論文「理性に基づく自然と恩寵の原理」の内容を押さえ,次に,この問題に対して現代の分析哲学が2つの主な答えを提起していることを明らかにした。即ち,ヴァン・インワーゲンの確率説(「無数にある可能世界のうち,存在物を含まない空世界は1つしかないから,現実世界が空世界である確率は限りなくゼロに近い。したがって,無である確率も限りなくゼロに近い」という主張)とロウの必然説(「自然数は必然的存在者である。しかし,具体的個物なしに自然数は存在できない。したがって,何らかの具体的個物が存在することは必然である」という主張)の2つである。 (2)検証原理(「命題の意味とはその検証方法である」ないし「検証可能な命題だけが有意味である」)はカルナップたち論理実証主義者が形而上学を批判する際に根拠としたものである。しかし,カルナップの自伝によれば,彼は(カントの空間論を別にすれば)哲学の伝統的な知識について学ぶ機会をほとんど持たなかった。つまり,彼の形而上学批判は形而上学への十分な理解に基づくものではない。また,長期にわたり検証原理の定式化に取り組んだエアは検証原理の論理的身分について,結局,「検証原理は提案である」と認めるに至った。これらのことを明らかにした。さらに,心理的動機に関して,「論理実証主義者の多くがオーストリアやポーランドのようなドイツから圧迫を受ける地域で活動していたために,ドイツの観念論的な哲学に対する感情的な反発を持ったのではないか」という仮説を立て,その検討に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)「分析哲学における存在論の現状」に関して,「存在の謎」については検討したが,もう一つの「カテゴリー論」(「対象・普遍2元論」「トロープ1元論」「4カテゴリー論」など)については予備的調査に終わり,それらの学説の比較検討までできなかった。(2)検証原理の歴史について,最初期の提唱者であるカルナップやエアについて調査したが,クワインの全体論が(形而上学批判の根拠としての)検証原理を破産させたこと,および,「クワインの全体論と形而上学の関係」に関する検討は十分に行えなかった。(3)今年度は調査検討に時間と精力を注いだために,研究成果を学会発表や論文の形でアウトプットするに至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)クワインの全体論が存在論の復権に対して持つ意味について考察する。(2)ストローソンの記述的形而上学が現代のカテゴリー論の先駆になったことを明らかにする。(3)初年度の成果とあわせて学会発表や論文の形でのアウトプットをおこなう。
|