2015 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における、法と感情の関係についての現象学的考察
Project/Area Number |
25580008
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
野村 文宏 別府大学, 食物栄養科学部, 准教授 (30369144)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現象学 / 法現象学 / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
[最終年度に実施した研究の成果] (1)感情は、変化しやすい非合理的なものなのか、それとも一定の合理性をもつのか、そして後者の場合、私たちにどのような有意味な情報を伝えるのかを考察した。その際、ハイデガーの状態性の分析などを手掛かりとした。(2)感情と法との関係性を考察するために、正義論について、アダム・スミスやベンサムなどの著作を研究した。(3)法の問題意識や法の問題の立て方を分析するために、法哲学や法理論について法哲学についての著作に即して分析した。以上の考察の仕上げとして(4)現象学的方法を法分野へとどのような形で応用し、法分野において感情が役割を果たす余地はどこにあるかを考察した。 [研究期間全体を通じて実施した研究の成果] まず、現象学の方法を法分野へと応用するに先立ち、応用されるべき現象学的方法はどのようなものであるかを考察した。つまり、「フッサールの現象学的方法」という意味で狭く解するべきか、それともより広く現象学の方法を理解するべきか、という点である。その結果として、現象学的方法を事象分析に即した形で広く解するべきであり、それが現象学の精神に合致するとの結論に達した。 次に、感情を現象学的に考察することで、感情が私たちにとっていかなる役割・機能を果たしているかという点を考察した。その結果、感情はつねに非合理的で変化しやすいものなのではなく、一定の制限のもとにではあるが、合理性をもっていて私たちの生活のために有用な情報を提供している側面をもつという結論に至った。 最後に、そのような感情のもつ合理性を、法分野にどのように活用できるかという点を考察した。
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