2014 Fiscal Year Research-status Report
宗教的教義に基づく経済と環境の均衡を目指す文化価値の創出に関する参加型研究
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25580013
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
木村 武史 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00294611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 宗教 / 環境 / 経済 / 健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、当初の予定とは異なり、研究の過程で明らかになった点を補う研究を行った。まず、インドネシア現地の人々にインドネシアの環境政策と日本における違いを説明してもなかなか理解してもらえない理由として、日本の状況についての直接的な知見がないからであると考え、研究協力者のナフダトゥル・ウラマ関係者の二名を6月半ばに一週間ほど日本に招へいした。日本の都市空間のあり方をみてもらうために、大田区の住宅街と小規模工場とが併存している状況、京葉工業地域の汚染対策の状況、大都市東京の緑地としての明治神宮などを見てもらった。そして、近代化・工業化と都市の環境対策は両立可能であるということを技術革新と政策の観点から理解してもらった。また、そのように都市の生活空間を美化している背後にある宗教的意識についても意見の交換を行った。 もう一点、重要な研究を行った。それは平成27年2月末にジャカルタ郊外に工場を持つグローバルコンクリート会社であるホルチムの工場を現地の研究協力者と訪問したことである。ホルチムはスイスに本社を持つヨーロッパ的な企業価値を持つグローバル企業であり、インドネシアにおいてもその環境に配慮した企業活動は高く評価されている。その実際を直接目で見ることにより、周辺の生活環境にも配慮した工場での生産活動は可能であることが分かった。 また、政府関係者、ボゴール・ジャカルタ・ウラマ協会との話し合いで、ウラマ、キアイ(イスラーム教師)を対象したワークショップ開催の可能性についても話し合った。 平成26年度での研究活動は一見すると、本研究の対象であるチシャダス村における宗教と環境と産業の関係に関係がないかのように思われるが、当該地域の外の様子を見ることによって、反対に現地に外からの良い影響を与えることができるということも考えられるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イスラーム社会といわれるインドネシアにおいて、イスラーム的な教義ならびにその専門家でもあるイスラーム教師(キアイ)が社会一般に対して及ぼす影響は強い、というのが従来の研究であり、それを前提として、調査地域チチャダス村と周辺の工場との関係の改善にイスラームの環境倫理あるいは環境神学が有効であると考えていたが、実際に現地の社会状況を見てみると、行政・イスラーム団体・経済企業関係者の間には、他の社会と同様の困難が想像して以上に利益の相反・衝突があることが明らかになってきた。それゆえ、当初の計画では、もう少し三者の関係をスムーズに構築できると考えていたが、企業側の壁がかなり高いことが分かった。 また、地球環境問題に関する世界的潮流が共有されていると考えていたが、そうではないことも判明した。日本の状況をある程度前提としていた研究代表者の想定も甘かったことが明らかになった。このような状況を克服するために、現地の研究協力者を日本に招聘し、日本の社会状況ならびに環境政策について見てもらうという、当初の予定にはなかったことを行ったため、現地での調整が少し遅れている。しかしながら、現地協力者に日本の状況を見てもらえたために、かえって意思疎通がスムーズに行くようになり、また、グローバル企業であるホルチムの環境政策の実施状況を見ることができたので、それらの知見を調査地であるチチャダス村に還元することは容易になったのではないかと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、今までに得た知見をいかに調査地であるチチャダス村に還元するかを実行することにある。今年度は第一に、ホルチムの担当者をチチャダス村に来てもらい、ホルチム工場の環境対策や周辺の住民との協力関係の実際を説明してもらう。それを通して、チチャダス村の人々にサステイナビリティの適切な事例を学んでもらう機会を持つ。第二に、チチャダス周辺の工場関係者とホルチムの担当者と一緒に会合を行い、ホルチムの環境施策をいかにチチャダス周辺でも実現できるかの話し合いの基盤を作ることを合意できる会合を持つ。その際には、インドネシア、ウラマ協会の協力によりウラマ、イスラーム教師(キアイ)にも同席してもらい、イスラームの教えからもいかにサステイナビリティ実現への向けての社会的取り組みが重要かを説いて もらう。2015年9月と2016年2月に、それぞれ会合を持つように計画を立てる。
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Causes of Carryover |
本年度中に計画していた研究計画が現地協力者が新しい仕事を始めたり、あるいはメッカ巡礼に行く予定が入った等で、予定していた現地での調査が予定通りできなかったため。次年度使用額は、このための旅費に主に充てる予定です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度である今年度には当初の予定を越えて、可能な限り現地での調査を行う予定です。
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