2014 Fiscal Year Research-status Report
フランシュ=コンテ社会から見たプルードン理論の現代的可能性
Project/Area Number |
25580018
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
三浦 敦 埼玉大学, 教養学部, 教授 (60261872)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | プルードン / フランシュ=コンテ農村 / 農村開発 / 所有論 / 共有資源(コモンズ) / 国際情報交換(フランス) |
Outline of Annual Research Achievements |
[研究の概要]本研究の目的は、プルードンの議論はその出身であるフランシュ=コンテ農村の現実の関係を明らかにし、プルードン理論の再評価を行うというものである。平成26年度は、フランスにおいて19世紀のフランシュ=コンテ社会の状況について資料の検討を行った他、19世紀以来今日までンフランシュ=コンテ農村社会の変化とプルードンの諸著作(特にSysteme des contradictions sociales)との対比を行った。また、プルードンの無償信用論を19世紀の農村社会の現状と対比して検討した。こうした作業の上で、プルードン理論の農村開発論一般に与える示唆を得るべく、フィリピンの農村社会を例としたプルードン理論の検討を行った。本研究の一端は、平成26年11月21日に、ブザンソンのフランシュ=コンテ大学において行われた研究集会Journee d'etudes interdisciplinaires "Le monde rural: entre ruptures et continuite"で報告したほか、その報告を踏まえて、平成27年にその発表内容をより拡充した論考をフランスで寄稿することと成った。 [研究の意義と重要性]平成26年度の研究の結果明らかになったことは、19世紀フランシュ=コンテ農村の社会変化が、まさにプルードンが望ましいと考えていた方向への社会変化を示していたこと、そしてその根底には共有資源(コモンズ)をめぐる問題があること、プルードンの「所有は盗みである」という有名の主張は、「アンチ=コモンズの悲劇」という観点から改めてとらえ直すことができること、しかしながら、彼が考えたアソシエーションによる社会の再編という解決策は、その後の様々なアソシエーションの試みの歴史に照らしてみた時、そのままの形では必ずしも現実的な解決策にはなっていないことなどである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年は、フランスの図書館や古文書館において資料の閲覧を中心に、フランシュ=コンテ農村社会の研究を行い、さらにプルードンの諸著作の検討を行った。また、現在のフランシュ=コンテ農村が抱える問題とプルードン理論の対比も行った。さらに、こうした検討を踏まえて、フィリピンの農村開発の現状とプルードン理論の対比も行うことで、プルードン理論がどれだけ非ヨーロッパ社会および(プルードンの時代にはまだ知ることのなかった)高度に複雑化した資本主義社会においても適用可能なのかを検討した。これらは、今日の農村開発をめぐる諸理論(新制度学派の議論やコモンズをめぐる諸理論など)を踏まえてのプルードン理論およびフランシュ=コンテ農村の変化の再解釈が、今まであまり顧みられることになかったプルードン理論の現実的な意義を再認識させるものとなっている。その意味で、平成26年度の研究は、プルードン理論の現代的(非マルクス的)解釈に一つの道をつけることができたと考えている。 もともとの予定では、平成25年度・26年度でフランシュ=コンテ農村社会との関係を検討することに成っていたが、フランシュ=コンテ大学での報告およびその後の寄稿論文の執筆は、その総括を目指すものであり、さらに平成26年度にはじめたフィリピン農村を想定した検討は、平成27年に、以上の検討を踏まえてオールタナティブな理論の可能性を検討するというスケジュールに向けた準備作業であり、概ね研究の進展と達成度は予定通り順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
予定では、平成27年度はプルードン理論と現代の諸問題をつきあわせることにより、プルードンを踏まえてのオールタナティブな社会経済理論の可能性を検討することに成っている。 現在、別の研究の作業として、セネガルの土地改革についての研究をまとめているほか、フランス(フランシュ=コンテ地方)やフィリピン、セネガルの土地利用の実態の検討を踏まえて、土地をめぐる所有論について新たな議論の展開を考えている。本課題研究のプルードン理論の検討も、そちらの議論の成果と合わせることで、より包括的なオールタナティブな社会経済理論の可能性を考えている。この時、共有資源(コモンズ)やアソシエーションの組織論を用いてプルードン理論を再解釈しながら、プルードンが論じた諸問題を現代に惹き付けて考えていく予定である。
|
Research Products
(1 results)