2015 Fiscal Year Research-status Report
わが国における数字譜の史的展開――その音楽知覚・認知的特性を視点とした再評価――
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25580025
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
山下 薫子 (坂田薫子) 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (90283324)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数字譜 / 数字唱 / 事例分析 / ジャック=ダルクローズ・ソルフェージュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本における数字譜の史的展開を明らかにした上で、その意義と課題について、音楽知覚・認知の観点から再評価することにある。 第3年次の平成27年度には、主として(1)数字唱を指導方法の1つとするジャック=ダルクローズ・ソルフェージュの理論的・実践的分析と検討、(2)認知的視点によって歴史的事象を再評価することの意義の検討、の2点を行った。 (1)の結果、数字唱の意義としては、以下の3点が導き出された。①長音階、短音階の別を問わず主音をIとしており、機能和声に基づく音楽理論の理解へと導くことができること。②移動ド唱法と固定ド唱法との混乱を避けることができること。③階名として数字を用いることにより、建物の1階、2階というような比喩的手法をとることが可能となり、幼少期の子どもにも理解させやすいこと。また、課題としては、次の2点を指摘した。①数字唱が感覚的に処理されていない段階では、いったん音名で音高をとらえた後、それを数字に変換するという知的で複雑な作業が強いられること。②「イチ、ニ、サン……」という唱え方が必ずしも歌いやすいとは言えないこと。これらは、学会の口頭発表および学会誌において公表している。 (2)については、史的調査と認知的視点とを組み合わせることにより、1つの事象を立体的にとらえて、新たな指導方法を開発することが可能になったという本研究の成果を、学会の研究方法に関するラウンドテーブルにおいて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究協力者との都合が合わなくなったことに加え、研究期間の途中で研究代表者に新たな公的業務が複数加わり、研究の遂行に割ける時間が著しく減少したため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に計画していた実験を、次年度に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
実践の試行の遅れによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に実施する数字譜と数字唱を用いた実践に伴い、物品費、旅費、人件費・謝金等として支出する予定である。
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