2015 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア南西部の民俗的ポリフォニック・コーラスに関する音響身体論的研究
Project/Area Number |
25580027
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
山田 陽一 京都市立芸術大学, 音楽学部, 教授 (80166743)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多声部合唱 / 音響的身体 / 民族音楽学 / 音響人類学 / 音楽人類学 / 国際情報交換(イタリア) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年9月8日から9月19日までの12日間にわたり、イタリア共和国サルデーニャ島中西部の二つの村落(ボルティガリとボザ)において、男性4人によるポリフォニック・コーラス(多声部合唱)に関する現地調査をおこなった。 ボルティガリでは、毎年9月7日から9月17日にかけて、村落から約20km離れたサウーク山の中腹で、聖母マリアを祝福する祭儀「サンタ・マリア・デ・サウーク」が開催される。サウーク山には村人たちが寝泊まりできる小屋が約50軒あり、毎日夕方になると、何百人もの人びとが車に相乗りして山にやってくる。そして小さな教会で祈りを捧げ、共に食事をし、ワインを飲み、臨時にいくつものコーラス・グループを結成し、歌い、踊る。今年度の調査では、この祭儀の来歴や成り立ち、社会的脈絡と意義、参加者たちの意識、儀礼のプロセス等に関する詳細な聞き込みをおこなうとともに、祭儀期間中に連日連夜、自然発生的に歌われる2種類の多声部合唱(宗教歌のカントゥ・ア・クンコルドゥと世俗歌のカントゥ・ア・テノーレ)における各声部の発声法や4声部の声の響かせあい、身体の相互共振をはじめ、合唱メンバーの選びかたや、それに伴う合唱の評価などについても、分析的な参与調査をおこなった。 ボザでは、9月12日と13日の2日間、聖母マリア祭が催された。12日には聖職者と村人たちが行列を組み、山の頂上にある教会から村の教会まで行進してマリア像を運ぶ。途中には多くの祭壇が設けられ、行列は各祭壇で立ち止まると、司祭が祈りを捧げ、4人の男性が「カント・ア・トラッジゥ」とよばれる多声部合唱をおこなう。翌13日には、マリア像が山頂の教会に戻され、その後、外の広場でミサが執りおこなわれる。今年度の調査では、1日目の行進に加わって、多声部合唱を中心に映像記録をおこなうと共に、2日目のミサの映像記録および聞き込み調査を実施した。
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