2015 Fiscal Year Annual Research Report
チュニジア音楽のトゥブー(旋法)とイスティフバル(即興)の分析
Project/Area Number |
25580028
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
松田 嘉子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (80407832)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アラブ音楽 / チュニジア / トゥブー / イスティフバル / マカーム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間全体を通じて、チュニジア音楽のルーツであるアンダルス音楽についての現地調査を行い、チュニジア音楽の歴史と変遷、特徴を浮かびあがらせた。現地調査は①平成25年3月~4月チュニジア、②平成26年3月スペイン、③平成26年7~8月チュニジア、④平成26年10~11月モロッコで行い、アンダルスを通じてアラブの楽器が西洋音楽に伝播して行く過程、アンダルス音楽から北アフリカに伝承された音楽形式や旋法等を明らかにし、西洋音楽とアラブ音楽の特質の比較を行った。 チュニジアでは「ラシディーヤ伝統音楽研究所」の研究を中心として、伝統楽曲の記譜、音楽教育法の変化、楽団の形成等、20世紀におけるチュニジア音楽の主要な歴史を記録したのは大きな成果である。またジャスミン革命後の文化芸術面の変化を追ったのは特筆すべき意義がある。さらにナイ奏者スラーフ・エッディン・マナーのチュニジアのトゥブーによる即興演奏の録画資料を作成した。 最終年度モロッコの現地調査では、ウードの巨匠サイード・シュライビを主たる調査対象とした。最高のウード奏者・作曲家であるとともに優れた楽器製作者でもあり、アンダルスで発達した様々な弦楽器を製作する貴重な歴史の証人であった。アンダルス由来の音楽・美術・建築・工芸等、包括的な芸術の伝承保護と育成を目的して「サイード・シュライビ財団」を立ち上げようとする矢先、今年に入り急逝されたのは大変惜しむべきことであるが、その壮大な意思は今日の音楽家や研究者になお指針を与えるものである。サイード・シュライビはモロッコという枠を超えた音楽家であったため、チュニジア音楽のトゥブーと共通するような旋法はもちろん、様々なオリエントの旋法も駆使し、即興演奏や作曲していることが考察でき、多大な意義があった。初版CD「グラナダの鍵」1, 2を始め稀少な名盤を献呈され貴重な音源資料となった。
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