2013 Fiscal Year Research-status Report
１８－１９世紀花鳥画と美人画の境界的画題に関する研究
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25580035
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Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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| Research Institution | Gakushuin Women's College |
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Principal Investigator |
今橋 理子 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (70266352)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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| Keywords | 日本・東洋美術史 / 江戸時代絵画 / 近代美術 / 画題 / 図像と言説 / 花鳥画 / 美人画 |
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| Research Abstract |
本研究は平成25年度より3年間にわたる予定であり、本年はその初年度にあたった。研究代表者は、長年江戸時代花鳥画と博物学の関係性を問う研究に取り組み、とくに近年では、18世紀以降に新たに生まれた「画題」の生成と消長の過程を明らかにする研究に重点を置いてきた。その研究途上で気づいたのが、根本的に「ことば」と切り離すことができない絵画ジャンルの存在であり、そこに暗喩として隠されたことばが、必ずしも現代語の意味や現代文化の事象とは直結しない場合が多く、すでに消失してしまった「出来事」など、歴史的および民俗的事象の反映である場合を想定すべきだということである。また現代では、「花鳥画」という絵画ジャンルに対しての議論は、モチーフの個別的同定やその組み合わせによる構図法など、表層的な分析にとどまっている場合が多い。しかし東洋の花鳥画は伝統的に、吉祥性を導く視覚言語として表されてきており、根本的に「ことば」と切り離すことができない絵画ジャンルである。従って現代の近世花鳥画への誤解は、何らかに明治という〈近代〉における花鳥画理解の問題も孕んでいる可能性が高い。そうした見解に基づき、本研究では18―19世紀における花鳥画と美人画の境界線が混迷しているかのような絵画作品群を洗い直し、再解釈を試みている。具体的には伊藤若冲による「白鸚鵡図」（ボストン美術館蔵本や千葉市美術館蔵本など）のような作例であり、ここに新たに楊貴妃言説に基づく〈見立て美人画〉であることが判明し、その後の日本絵画においても一つの確固たる「画題」として確立した様相が明らかになる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の日本および東洋美術史の解釈では、美人画を含む「人物画」と「花鳥画」はジャンルとして厳然と分けられており、ましてや〈見立て〉の思考が両者の間で成立していたという見解は示されてきたことがない。こうした作品解釈を可能にするための新たな原理性の発見を確立することが重要であり、それを確立した先には、明治時代以降のいわゆる近代美人画・花鳥画の「主題選択」に関して、再考を促すことになるだろう。平成25年度の研究成果として研究代表者は上記「白鸚鵡図」の問題について、「主題選択」の観点から明治時代以降の同主題作品についても新しい知見を得たので、現在それをまとめるべく論文執筆に従事している。その成果は雑誌『アステイオン』81号（サントリー文化財団、2014年秋発行予定）および『学習院女子大学紀要』17号（2015年3月発行予定）で発表予定である。
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| Strategy for Future Research Activity |
前項でも述べたように、研究代表者は現在、明治時代以降のいわゆる近代美人画・花鳥画の「主題選択」に関しての再検討を行っており、平成25年度の研究成果として準備中の２つの論文をもとに、さらに他のケーススタディについても扱ってゆく予定であり、その上で次なる著書の執筆を計画している。具体的には円山四条派の流れを汲む近代美人画に関する考察であるが、これについては現在、実地における作品調査と文献資料の収集を同時に進める形で推進しており、作品調査に関しては平成26年度中にほぼ終了の見込みである。来年度（平成27年度）についてはそれらの分析も終えた上で、最終的な著作執筆に集中したいと考えている。
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