2013 Fiscal Year Research-status Report
映像投影と絵画のイメージ合成によるテクスチャの空間特性の研究と視覚表現
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25580041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
古澤 龍 東京藝術大学, 芸術情報センター, 教育研究助手 (50648087)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 映像投影 / 照明制御 / 絵画空間 / 質感 / 技法材料 / メディアアート / 色彩 / 芸術表現 |
Research Abstract |
平面を支持体とする視覚芸術においてそのメディア成立条件は、①光源。そして照らされる②支持体その反射の差を捉える③人の網膜と解析する④視覚野というプロセスの中で、ある一つのレイヤーを除き安定させる事であると考える。例えば映像投影では①の光源自体に差があり、②のスクリーン以下を安定させる必要がある。絵画では逆に①の光源は安定させなければならない。本表現研究ではこの全ての過程において変化させる環境を引き起こさせ、③④のレイヤーに値する目の順応という生理現象との駆け引きの中で、かろうじて視覚対象を立ち上がらせます。初年度は、それを実現する為に複数台のフルカラー高輝度LED照明の時間軸と絵画面に投影する映像とシームレスに同期するシステム開発を行い発表した。 またこのシステムによって可能になる特殊な表現(空間性が変容して見える現象)について検証を行った。 参照にしたのは、ドイツの心理学者ダーヴィット・カッツの提唱した「色彩の現象的分類」である。カッツの「色彩の現象的分類」には表面の保持している定位性の有無を「面色」と「表面色」という色自体ではなく色の現れ方として分類した概念を提示している。平面作品において見え方は同一定位性である平面性(表面色)が付いて回るが、鑑賞空間の明るさによってこの平面性が薄らぎ、絵画イメージのみが持つ空間性(面色)が立ち上がる。端的に、薄暗いほうが絵画の平面性は忘れ去られ、空間性は見やすくなる。本研究のシステムにおいては、絵画以外は無反射の暗室の為、照明の変容に気付きにくく、気付かないうちに画面の空間性の変化に引き込まれることになる。 このような認知科学や生理学と色彩学を絵画表現や視覚芸術の分野に接続した事例や研究はまだ浅く。2013年度秋に東京芸術大学芸術情報センター内において行われた展示発表でそのような分野での実践と、この研究における可能性を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
認知科学と生理学に基づく評価の手法を選定に難航している。 様々な条件が変化する環境において、鑑賞者一人一人の体験を比較する際に、まず、何処を見るのか、大きい支持体であればある程、その差が大きく出ることと、照明と映像を使用した本研究表現においては画面の最も明るい部分と暗い部分のコントラストが非常に離れていることから、その瞬間にどの場所を見ているかによって、順応のレベルが変化してしまうためである。 当初、単に画面の部分的反射率の差や照度などを計測比較することで客観的なデータが得られるかと想定 していたが、2013年度の研究発表においてこの問題が浮上した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、映像イメージと絵画の物質イメージ合成の新しい手法を構築する。 イメージの撮像、生成段階から、最終的に展示するまでのイメージの変化の有様を目の当たりにさせる、装置を開発する。具体的には、カメラオブスキュラの機構を用い、外部の光景をレンズを通して集光して、暗室内の半透明スクリーンに投影させる、スクリーンには、描がくなどの処理を人為的イメージ操作を行うか、または、投影された光に応じて自動的にイメージを生成していくれるような感光処理をすることを想定している。感光乳剤を塗ったスクリーンは自動的に光の絶対量に応じて像を浮かび上がらせる。 昨年度のモデルでは、スクリーンのイメージ自体は変化しなかったが、今後の研究では、スクリーン自体も変化してしまった場合に最終的にどのようなイメージが伝達されうるかを検証したい。そこでは、変化するイメージに対して、どう空間性を判断すべきか、視覚野が混乱させられることが想定されるが、具体的にどのような理由で混乱が起きるかまで検証し、このよう条件下でのイメージ操作、空間性についての技法を確立することを目標としたい。 また、照明の操作において、昨年度は一般的な照明コントロールで用いるDMXという通信プロトコルを用いたが24bitカラーのデジタル制御をしていたが、大きな欠点として暗転した0から1/255の数値への移ろいに関しては非常に荒い変化と感じさせてしまうことである。この問題に対処するため、今年度はDMXデジタル制御に加え、偏光板によるアナログの遮光技術を加えたシステムの構築も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度購入予定だった、照度測定機器などを計測方法の選定難航により次年度に見送ったため。 今年度は主に平面媒体の時間的変化をもたらすための感光乳剤の開発のための実験器具から、照明のよりなめらかな照度制御の為に偏光板を用いたアナログの減光システムの構築の為の光学機器などを購入し、新しい、映像と絵画の合成手法の構築を目指します。また、プログラミングや、写真現像機器に精通した学生を雇い制作を進める。 また、測定方法についても、決定次第、測定機器などの購入にあたる。
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Research Products
(1 results)