2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25580048
|
Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
海老塚 耕一 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (60407822)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 晴眼者と視覚障害者 / 触れる / 開かれた作品 / 質料ー素材としての木 / フロッタージュ |
Outline of Annual Research Achievements |
「視覚障害者を含めたすべての人に開かれた作品の構築」の研究を進めていく上で、大きな問題となるのは、質料ー素材をまず何によって進めていくかであった。そこで多くの人が身近に感じている「木」の使用を初年度より決定し研究を進めてきた。多種多様な木材によって作品の構築を試み、木の持っている臭いや肌理に対して多くの観照者が心を開いていくことを実感する。 まず、横須賀美術館での個展「境界へ、水と風から」(9月27日から12月14日)では昨年度開催した糟カスヤの森現代美術館での個展と同様に木を主体として作品を展示、しかも開催期間の全日、すべての人が自由に作品に触れることができるようにした。多数の未就学児や幼稚園・保育園の子供たち、小学生や中高生、そして一般んの人々、さらにさまざまな障害を持った方々に作品に触れたいただくことで、作品がどのように開示していくかを認識することができた。ひとつのあり方だが、「触れる」と言うことは観照のあり方として、かなり有効な手段と言うことが見えてきた。またここでのワークショップ「フロッタージュで探る美術作品のありか」では、20名ほどの参加者で行っていたが、最終的には美術館に寄った多くの人に参加していただき、最終的には70名以上の人が作品に触れ、作品の言葉を聞くために、フロッタージュを行っていた。 さらに横浜の小さなギャラリーfu(2015年3月)の個展では、参加型の作品を作ることとし、こちらが制作したものを、ワークショップに参加した子供から大人までの人々によって、フロッタージュした作品で、ひとつの作品構築を試みた。盲目の小学生も参加し、今後の研究の方向を見定める、良い機会となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの展覧会によって新たな鑑賞のプログラムの構築に向けての、方法のヒントを得た。 ただ、さまざまな素材において制作を行おうとしていたが、木が主体となり、鉄、砂鉄等をそこに組み合わせるというのが表現の全体を占めていたことに、研究の少々の遅れを感じるが、これは長い時間を必要とする研究なので、まず木を主体とした表現をしっかりと見極めていく必要を感じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
さまざま素材により、「視覚障害者を含めたすべての人に開かれた作品の構築」を目的としていたが、マジ始まりに選んだ「木」における作品構築において、まだまだ探求を進め、深い思考のもとに表現を見いだすことが必要であることが判明した。 「触れる」ことと「感じ考えること」の一連の動作のなかで、「木」が及ぼす鑑賞者への作用と可能性、そして限界を見いだすことで、まず視覚障害者へのアプローチをし、それが晴眼者に及ぼす影響を考えてく。
|
Causes of Carryover |
研究の速やかな実施を進めていくなかで、制作とともに発表(展覧会)が重なり、フランスおよびイタリアにおける視覚障害者教育と、触察本の現状把握のための調査を行えなかった。 さらに素材に関しての研究も初年度よりの素材で行えたため、このような状況となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
フランスおよびイタリアにおける視覚障害者教育と、触察本の現状把握のための調査を行い、そこでの結果をもとに、さらに「視覚障害者を含めたすべての人に開かれた作品の構築」のための研究と制作を行う。 「視覚障害者を含めたすべての人に開かれた作品の構築」を考えて行う、二つの展覧会により成果を示す。
|