2015 Fiscal Year Annual Research Report
Charles Lambのロマン主義作家としての位置付けを見直しする
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25580061
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
吉田 泰彦 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40145909)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チャールズ・ラム / ウィリアム・ギルピン / ピクチャレスク / ロマン主義的想像力 / ワーズワス / 外界描写の意義 / 自然の風景 / 都市的風景 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はラムの現状における位置付けを確認した後、彼のエッセイ数点を用いてロマン主義第一世代詩人ワーズワス・コールリッジの作品との共通点を探究することによりその位置付けを揺り動かす試みを論述した。次年度は、より根本的な論証の必要性を痛感して、ロマン主義の生成発展の流れの中に位置付けるべく、その第一段階として前期ロマン主義の代表的詩人クーパーを風景という視点から捉え直した。 最終年度は以下2点の研究を実施した。(1)ギルピンの初期3作品を検証して、彼のピクチャレスク観形成・発展・止揚の過程の綿密な観察と分析を通して、彼の作り上げたドグマティックなピクチャレスク観から脱却していく様子が『ワイ河紀行』に読み取れることを指摘して、狭義の美学理論家としての世評を彼自身が脱構築していることを論証すると同時に、彼のこのような姿勢こそが直後に登場するワーズワス・コールリッジのロマン主義文学との真の接点を可能にしていることを主張した。(2)これまでの研究結果を、大きく「外界描写の意義」という視点から捉え直すことを試みた。すなわち,ロマン主義文学の目標を、18世紀啓蒙主義の負の遺産である普遍的観念主義を脱却するための苦闘として捉えた。Langbaumの言う「ロマン主義は客観性、すなわち、外的世界への価値の付与を通して社会や自然との結合を果たすという新たな原理」の探求の結果が、人間的反応を含む高密度の外界描写へとロマン主義作家たちを向かわせたという命題を彼らの代表作品数点に照射するべく努めた。このような手法によって、ワーズワス等が主として美的価値を備えた自然界を現代人にとって意義深い世界として描き出すのに対して、ラムは雑踏の都市的風景、そこに生活する人間のみが価値を与え得る反美的環境を逆説的に意義深い世界としていることを論じた。
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