2013 Fiscal Year Research-status Report
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25580062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
難波 美和子 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (50336971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 素世子 東海学園大学, 人文学部, 教授 (70191046)
小松 久恵 追手門学院大学, 国際学部, 講師 (80552306)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インド英語文学 / 英語圏文学 / インド英語 / インド文学 / 新中間層 |
Research Abstract |
「インド英語文学」という用語が、日本では特に英米で活動する「インド系」作家の作品を指す言葉として使用されており、「インドの」英語文学という視点に欠けている。と同時に、インドでも現代的な英語の使用者と彼らの英語文学については、十分に理解や分析が行われていない。したがって「英語使用者の増加とネイティブ言語使用者層の中間階層化の中でのインドの英語文学の現在」を確認することは、意義がある、ということを共同研究の開始にあたって確認した。インドにおいて一定の評価を受けてきた英語文学と近年の英語文学の連続性と断絶、そしてこれらの特徴を明らかにするために、それぞれが自分の関心や可能な領域でインドの英語文学をリスト化し、特徴を挙げる作業を行っている。ここでは、クシュワント・シンや R.K.ナラヤンのようなインドではきわめて著名な作家と、現在国際的な評価をうけるアミタヴ・ゴーシュやキラン・デサイといった近年活躍する英語作家、そして国際的には評価されず、むしろインド国内で人気を持つチェタン・バガットのような作家たちの差異と広がりに注目している。 こうした作家側に視点を当てた、近年の英語文学の動向に注目するとともに、どのような読者がどの作家の作品を選択するかに注目している。そのために現在のインドの学生がどのような文学を読んでいるか、アンケートを試験的に行った。まだ数量的にはわずかであるが、チェタン・バガットの出現率は極めて高かった。これは、イギリス・アメリカの書店のベストセラー・サイトや店頭にバガットの名前がほとんど挙がらないことと対照的である。このことからも、インドの英語文学が英米の文学的動向とは異なった方向性を持っていることがうかがわれる。 作家の活動と読者層の特徴を通して、現代インドの英語文学における芸術性・国際的傾向と、大衆化・娯楽的傾向の二極化が垣間見えてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の予定は、以下の通りであった。(1)現代インド英語文学の現状を把握:インドの英語文学の最近の動向を、雑誌掲載作品や単行本の出版状況、売れ行きや書評などから、インド本国および海外移民の間で好まれている作品、作家を調査する。インドの英語文学をリストアップし、文芸英語小説と大衆英語小説という分類の是非を検討し、それらの作品にみられる変化や特徴を明らかにする。(2)インド英語文学の出版事情の調査: 英語文学の出版状況、媒体、読者層などを調査する。(3)インドの英語普及と教育についての調査:最近10年程度の期間におけるインドの英語普及状況、教育体制を通じて、英語による情報需要者の状況解明、および英語と現地語の併用状況を調査する。 これまでの情報の整理などによって、どのような作品が出版され、人気があるのかの傾向に注目してきた。このため、(1)については、リストの作成や情報の共有に向けて順調に進んでいる。しかし、書評の調査までは行きとどいていない。(2)(3)については、研究会において既存の情報を確認したところであり、新たな情報を付け加えるにはいたっていない。これは、年度の早い時期に研究会を行い、方針や今後の予定について相談することになっていたものが、日程を確保することができず、それぞれメールで連絡を取りながらの作業となったため、全体についての合意はあったものの、明確な方針を共有することができなかったためである。アンケートの作成も年度初めの研究会で検討する予定であったが、結果的には年度末になってしまった。しかし、年度末の顔合わせておおむね意識の統一が図れ、アンケートも案を作成し、試験的に実施することができた。その結果はインド国内における特徴が存在するというこれまでの見解を強めるものとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在行っている作業を継続する。英語文学のリストを様々な方向から作成し、相互の重複・欠落を確認していく。その中で、オーセンティックな英語文学の流れと、エンターテイメント的な英語文学との流れが見えてくることを期待している。作家の活動やつながりが見えるようにリストを工夫することで、ネイティブ言語の文学とのつながりも見えてくることが考えられる。 読者層による読書傾向の差異を図るアンケートをより広く実施する。できれば文学専攻ではない工学や経済の学生にもアンケートをとれるよう、南アジア研究者のネットワークを活用する。アンケートは煩雑にならず、具体的な作家や書名があがる方法を工夫する。 今年度は年2回の研究会を行い、進展状況を報告するとともに、研究方針の確認と、われわれの仮説の見直しを行う。7月の南アジア研究集会において、本研究の中間報告を行うとともに、アンケートへの協力を呼び掛ける。平成27年度初めには現代インドにおける英語文学の展開と、読者としてのインドの英語使用層の相互関係について、一定の提案を行う。その提案を10月の南アジア学会において、報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の支出は主として書籍等資料の購入、研究会のための国内旅費に当てる予定であった。しかし、研究会の実施が年度末となったため、共同研究の方針について詳細を詰めることが遅くなった。このため、購入する予定であった書籍や物品の選定が年度内に間に合わなかった。また、研究会開催の日程が限られていたため、参加できないメンバーがあり、旅費も予定通りに使用しなかった。研究の進展が遅れたことと連動し、結果として支出が予定通りに行われなかった。 平成26年度は、昨年度に進まなかった資料の収集を行い、年度内に2度の研究会を行って、遅れを取り戻す予定である。したがって、昨年度未使用であった分は、今年度の配分額と合わせて、予定通り、資料収集、旅費、調査協力者への謝礼として使用する。
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