2014 Fiscal Year Research-status Report
ヘンリー・ジェイムズと日本:19世紀末ボストンの日米芸術交流に見る自己探求の軌跡
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25580064
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
福田 敬子 青山学院大学, 文学部, 教授 (80276005)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヘンリー・ジェイムズ / イザベラ・スチュワート・ガードナー / ジェイムズ・マクニール・ホイッスラー / 松木文恭 / 岡倉天心 / ジョン・シンガー・サージェント / ジャポニズム / ボストン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、アメリカ人作家ヘンリー・ジェイムズと彼の友人で美術品収集家のイザベラ・スチュアート・ガードナーとの関係、および、この二人とニューヨーク、ボストンという土地の関係について調べるほか、二人が好んで滞在したヨーロッパ、とりわけ、ロンドンとヴェネツィアのアメリカ人サークルについて調査する予定であった。 しかし、26年9月28日の日本アメリカ史学会第11回年次大会で「モースの愛弟子(?)の新世界体験(発表応募時のタイトルは「モースの愛弟子(?)のアメリカ体験」)」:美術商人松木文恭(1867-1940)の『アメリカその日その日』」という研究発表をしたさい、松木についてもう少し調べる必要があると感じ、26年度後半も松木とその周辺を中心に資料収集を続けることにした。そのため、ヨーロッパでの調査は27年度に延期することにして、先にニューヨークやワシントンDCに赴き、より詳細で念入りな資料調査をすることになった。 その結果、これまで不明だった、ボストンの店をたたんだあとに移ったニューヨークでの松木の活動がある程度明らかになった。 また、松木と取引があり、のちにワシントンDCにフリーア・ギャラリーを創設することになるチャールズ・フリーア(Charles Lang Freer 1854-1919)、フリーアと親しかった画家ジェイムズ・マクニール・ホイッスラー(James McNeal Whistler 1834-1903)、ジェイムズが高く評価していた友人で画家のジョン・シンガー・サージェント(John Singer Sargent 1856-1925)、ジェイムズ本人の関係を調べるうち、松木についての調査が、最終的には、ジェイムズとガードナーのテーマ、また、場所もヨーロッパ、特にヴェネツィアにつながっていくことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とは執行の順番が変わったが、おおむね順調に研究が進んでいるといえる。 平成26年度に力を入れた松木文恭関連の資料はかなり集まり、目を通すことができた。また、本研究における重要人物同士が交わした書簡等、新たな資料をニューヨーク、ワシントンDCで収集することができた。その中には松木文恭とフリーア、フリーアと山中定次郎、ガードナーと岡倉天心の書簡が含まれ、本研究の新たな展開が期待できると考えられる。 平成25年度中には論文発表をすることはできなかったが、平成26年度には、「ヘンリー・ジェイムズとイザベラ・スチュワート・ガードナー:明治期における日本とボストンの芸術交流についての一考察」(青山学院大学文学部『紀要』第56号 77-96)を発表することができた。これは、そもそも今回の科研費を申請するきっかけとなった平成24年度の学会発表「ヘンリー・ジェイムズとイザベラ・スチュワート・ガードナー:明治期の日米芸術交流がアメリカ文学に及ぼした影響の一考察」(アメリカ学会第46回年次大会)をもとにしたものであるが、科研費取得後に発展させた研究調査内容を盛り込み、大幅に改訂したものであるため、当該科研費による研究成果を反映させた論文と言える。 平成26年度に行った学会発表「モースの愛弟子(?)の新世界体験:美術商人松木文恭(1867-1940)の『アメリカその日その日』」も、その後収集した資料で内容を発展させ、平成27年度中に論文にまとめられる見込みである。 さらに、科研費申請の研究課題である「ヘンリー・ジェイムズと日本」に直接つながる、ジェイムズと日本の関係を分析した論文も執筆予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該科研費による研究期間最終年度である平成27年度は、上記「研究実績の概要」に記載したように、調査研究の順番が変わったため、26年度に執行する予定だったヨーロッパ方面の調査を中心に行っていきたい。 ジェイムズとガードナーの関係、および二人とニューヨーク、ボストンの関係についての調査を続けると同時に、二人とヨーロッパの関係も調べていく。特に、ジェイムズが暮らしたイギリスのロンドンと、ジェイムズとガードナーを含む多くのアメリカ文化人が集まったイタリア・ヴェネツィアのアメリカ人サークルの実態について調べたいと考えている。 そのさい、平成26年度の調査で入手した松木文恭、岡倉天心、フリーア、ホイッスラー、サージェント、ジェイムズ、ガードナーに関連した資料をていねいに分析しつつ、ロンドンとヴェネツィアを訪問してあらたな現地資料にもあたりたい。 同時に、岡倉天心、松木文恭ら日本人と、日清・日露戦争時のボストン社会との関連も引き続き調べていく予定である。 また、友人の多くが日本に夢中だった時代に、なぜヘンリー・ジェイムズがヨーロッパにばかり目線を向け、日本にあまり関心を抱かなかったか(あるいは、日本に関心があったとしたら、なぜあえて作品にはその関心をあまり表現しなかったか)を明らかにしたい。 最終的には、ヘンリー・ジェイムズ研究を中心にすえながら、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのボストン周辺のアメリカの文化人と、日本-イタリアをつなぐそれぞれの自己探求のありかたを明らかにしていきたい。
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Research Products
(1 results)