2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25580065
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
松永 典子 帝京大学, 理工学部, 講師 (00579807)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フェミニズム / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、ジェンダーおよびフェミニズム視点による学術の再構築が求められて久しいにも関わらず、一般市民にその意義が十分に浸透しないように思えるのはなぜか、という問題意識のもと、シスターフッドの成功と失敗を、大戦間期(第一次世界大戦から第二次世界大戦開始直前まで)の文学作品に描かれた「女児」を中心に考察する。考察の基軸に経済・階級・人種とナショナリズムの観点を据え、文学作品に描かれたフェミニズムという女たちのつながりを縦軸として検証し、そのつながりの伝統を阻害したもの/促進したものの解明を目指す。 平成26年度におこなったのは主に次の四点である。第一に、国内での文献調査を進めるととも渡英調査を大英図書館にて実施し、必要資料を入手した。第二に、文学作品の分析をおこなった。具体的にはEvadne Priceの代表作を分析し、その成果を論文として発表した。第三に、研究会を企画し、研究協力者と意見交換を定期的におこなう(2月に1回程度開催)とともに、他の研究仲間の主催する研究会および所属学会の大会および例会に参加し、最新の情報を集めることに努めた。 本年度の具体的な成果は主に二つに大別される。第一に、大衆児童文学を数多く出版するEvadne Priceのフェミニズム作品の代表作をポストサフラジスト小説として位置づけ、本作に描かれたシスターフッドを「労働概念」との関わりから分析し、第三波フェミニズムの可能性を示した。第二に、フェミニズムの多面性を複合的に捉えるために、他の社会的ムーブメント(階級運動・世代格差)の考察をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題研究の二年目における本年においては、主に①文学作品の分析、②文献収集、③学会への参加、④研究成果の発表)の実施計画を立てた。 総合的に判断すると、第一の文学作品分析が順調に進んだ結果、論文を当初の予定より1本多く発表することができた。第二の文献収集および調査については、調査予定の雑誌の一部が調査機関の大英図書館の資料のデジタル化に伴い閲覧不可となっていたために、予定していた調査ができなかった。その代わりに当初の予定を前倒しして論文執筆(成果発表)を中心に進めた。未閲覧の資料は必要箇所がおおよそ判明したので、現在、国内図書館を通じて収集しているところである。第三に、学会等への参加は非常に順調に参加することができた。勤務先の都合により参加できない場合には研究協力者にメール等の連絡手段を用いることで最新の動向を把握することに努めた。第四に、論文執筆については予定以上に執筆することができた。従って、現在までの達成度はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の成果によって、第一に20世紀をとおして、女児が年齢の枠組みを越えた概念へと変化したこと(「女児」概念の境界の曖昧化)と、第二に「女児」の労働概念を再考する重要性に気づくことができた。 そこで研究課題最終年度である平成27年度については、女児というキーワードを、「ガール」に発展させたうえで、ガールにとっての経験をとくに「労働概念」から考察する。「ガール」という用語は、英語圏のみならず日本語圏においても20世紀後半から現在にいたるまで広く流通し、女児のみならず若年女性および成人女性を指す言葉としても用いられる。20世紀後半に流通する用語を対比させることによって、20世紀前半の女児概念の特異性を明らかにするとともに、さらには20世紀後半のそれの特異性を逆照射することが可能になると考える。
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