2014 Fiscal Year Annual Research Report
人間は人工神となりうるか?―フロイトとカフカのアントロポロギー
Project/Area Number |
25580072
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
山尾 涼 松山大学, 法学部, 准教授 (70639608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 勝彦 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (90135278)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カフカ / フロイト / アントロポロギー / 身体観 / ドイツ語圏文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度の研究で集めたフロイトとカフカの疾病データを基に、彼らの抱えていた病いが、他者や外界への洞察にどのように役立てられたかを論じた。痛みや病気が、創造活動や外界の認知にどのように作用するかの分析を目的とした。カフカのテクストに散見される離人感は、神経症や統合失調症の初期症状として現れることの多い症状である。それが文学として描出される形式を探っていくと、症状によって分断されたカフカと世界との統合感は、身体的な「痛み」が媒介となって復元されたことが分かる。離人症に悩む人々は現代において少なくなく、離人症のテクストによる描出形式を探ることは、この病気を文学的側面から知る上で有効な手法であったといえる。本年度は特にカフカのスケッチにおける〈歪み〉に着目し、描かれた身体の歪みが、作家のテクストにおける身体像の歪みとどのように関連づけることが可能であるかを探った。 カフカは身体に内在する「病い」という他者性を意識することで<自ら>を知り、外在する他者としての「人間」を理解した。それは他者性を受容し、共感するということがなくては不可能な作業だといえる。この洞察における「共感性」が、現代における「人的資源」として活用されることを望む「わたし」自身によって疎隔される「わたし」や、高度の医療によって分節化される本来的な身体といった、いまに生きるわれわれの<身体>に外在し、同時に内在もしている他者性にまつわるディスクールの問題点の理解と解決に応用可能であることを明らかにすることが本研究の最大の目的だった。
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