2013 Fiscal Year Research-status Report
都市ローマをめぐる18-20世紀英仏独伊語圏における表象史
Project/Area Number |
25580073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
鳥越 輝昭 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (50164075)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ローマ / 表象 / 経済格差 / 水 / 堕落 / 階級 / 金 / 神 |
Research Abstract |
都市ローマについて、英仏独伊語圏で18世紀~20世紀に提示された表象を、文字資料・非文字資料の両面から、歴史的・超域的に考察することが最終目的である。平成25年度については、20世紀初頭から60年代までの表象を主要な調査考察対象とし、調査考察結果の一部分を、3点の論文として発表した。すなわち、①「『愛の泉』とその原作(?)のなかのローマ」(神奈川大学人文学会『人文研究』第180集、2013年9月、pp. 37-73)②「『ローマの哀愁』に無い〈ローマ〉と在る〈ローマ〉」(同誌、第181集、2013年12月、pp. 1-35)③「『ローマの女』のローマ性」(同誌、第182集、2014年、pp. 23-61)、である。 論文①は、米国映画(1954)と米国で出版された原作小説(1953)とを分析し、両者ともに米伊の経済格差を背景にしながら、映画はローマについて〈水の都〉の幻影を生じさせて泉の霊力物語を作り上げている、という新鮮な指摘をした。 論文②は、米国映画(1961)と米国で出版された原作小説(1950)とを分析し、両者ともに〈ローマ人の堕落〉という古代以来の伝統的表象を提示し、寄生的ローマ人こそを〈永遠の都〉の永遠性の本質と見なしている、という新鮮な指摘をした。 論文③は、イタリアで出版された小説(1947)の主人公であるローマ庶民階級の女性について、18世紀英国で出版された小説『モル・フランダース』と対照的に、社会的上昇性の欠如、金銭への羞恥、現世利益の不在という特徴が見られる、という新鮮な指摘をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の理由から、上記のようであると判断します。 ①研究課題に直接関わる資料および関連資料の収集が順調であり、それらについて必要な範囲の検討・考察が進行していること ②都市ローマについて、文字資料・非文字資料で取り上げられることの多い場の多数を実地に確認できたこと ③調査・考察の結果の一部分を3点の論文として発表できたこと
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(平成26年度)については、19世紀後半を中心に、英仏独伊語圏のローマ表象を、文字資料・非文字資料の両面から、歴史的・超域的に考察する予定である。具体的には、イタリア統一から生じた社会状況や、国家と宗教勢力との確執に注目しながら、文学作品・建築物・絵画・写真などの資料を検討することになろう。資料が取り上げるさまざまな場についても、現場を確認する作業を実施することにしている。 来年度(平成27年度)については、19世紀前半を中心に、やはり英仏独伊語圏のローマ表象を、文字資料・非文字資料の両面から考察する予定で、とりわけロマン主義思潮との関わりが重要な課題になるだろうと予想している。
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