2013 Fiscal Year Research-status Report
医療・心理・教育におけるナラティブ・データの汎用性の検証と分析手法の確立
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25580082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
奥田 恭士 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10177173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 靖子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00331679)
糟屋 美千子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (20514433)
内田 勇人 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (50213442)
寺西 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90321497)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多面的ナラティブ分析 |
Research Abstract |
本研究は、物語論・文体論・ディスコース分析の手法を、医療・介護・カウンセリング・教育等の分野で行われる語りの分析に援用し、ナラティブ研究の汎用性を検証すること、ナラティブ・ベイスト・メディスン(NBM)等の「非文学テクスト」に、物語論・文体論的なテクスト分析と考察を加えることにより、非文学的な語りの独創性や暗示的意図および効果の顕在化を試みることを目的とする。平成25年度は、研究の第一段階として、まず医療・心理・教育等の各分野における先行研究を行い、ナラティブ分析の援用例を中心に、テクスト分析の手法が各分野でどの程度浸透しているかについて調査した。具体的には、ナラティブ研究の発展経緯および理論に関する基本書や、それぞれの分野の専門雑誌から、特に仮説設定に有効と思われる質的および量的研究を精査し、「非文学テクスト」において「語り」という行為がどのような効果を生み出しうるかという課題について検討した。また、ナラティブ・データ収集の準備として、語り手のプライバシーやデータの客観性など、ナラティブ研究の汎用性を検証する上で前提となる問題点の抽出を試みた。いじめや虐待、病いなどの自我違和的な経験を語ることは、語り手と聴き手との関係性なしには成立しない。被験者の情緒的充足や認知機能の向上等につながる「語り」をデータとしてどのように分析・検討していくかが課題となる。これらの検討の結果、インタビューや心理アセスメント、認知機能および日常生活動作能力調査における収集データを扱う際、それぞれの分野で抱える固有の問題があること、これまで個々に行われてきたデータ分析に、物語論・文体論・ディスコース分析の観点から検討を加えることによって、ナラティブ分析の手法を改善しうる可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、研究手法の確立に向けて、先行研究の精査を行い、ナラティブ・データ収集に関わるインタビューや調査のあり方や方法について検討した。当初の計画どおり、おおむね順調に進んでいる。研究分担者間で調整準備を行い、新規の調査項目の検討および次年度における調査の具体的な方法等について協議した。また、先行研究の精査を踏まえて、学校・教育関係者へのインタビュー、介護老人保健施設、医療機関などでの調査を徐々に進めている。データの取り扱いについては分野間でそれぞれ固有の問題や制約があるため、データに物語論・文体論・ディスコース分析を加える際の注意点や有効性について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、研究分担者ごとに、また研究協力者も含めて、これまでもおこなってきたナラティブ収集を継続していく。収集したデータは、医療・心理・教育の各専門の観点から質・量的分析をおこなうとともに、これと並行して同じデータを対象に、物語論・文体論・ディスコース分析の観点からもテクスト分析を行いながら、各専門分野での分析および考察を相互に照合し、分析手法の改善と精査を進めていく。また、研究分担者ごとに成果発表を積極的に開始し、グループ全体の成果についても、専用のホームページを立ち上げ、それを通して随時公開していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、おおよそ当初の計画通りの執行であったが、各研究分担者がそれぞれの分担分を初年度執行の限度内におさめたため、グループ全体で予定の1割程度(131,472円)を次年度繰越とした。使途は、設備備品費として、ナラティブ・データ収集および分析のための機器、先行研究に関わる専門書・雑誌等の書籍費、プリンタなど周辺機器に使用する消耗品費のほか、国内・国外旅費、またナラティブなどの研究資料の提供者に対する謝金や研究補助員に対する人件費などである。 次年度研究費の使用計画としては、分析手法に関する専門書など書籍費およびデータ記録メディアを含む周辺機器消耗費に加えて、国内・国外旅費、データ提供や分析に関わる謝金と人件費が継続して必要となる。また、グループ全体の研究成果を発信するために、グループのホームページ作成費、学会・シンポジウム等への参加および開催費用を見込んでいる。
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Research Products
(6 results)