2015 Fiscal Year Research-status Report
子供の文理解の実時間的実験による、文処理における発達的側面の新しい検討
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25580086
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広瀬 友紀 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50322095)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 韻律情報 / 実時間処理 / 発達 / 複合語 / 枝分かれ曖昧性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに行った、成人および6-7歳児を対象とした実験成果をもとに、更に対象となる子供の年齢層を下げて引き続き眼球運動実験を行った。具体的には、1.複合語構造の予測処理と複合語アクセント規則適用を示唆するアクセント変化情報の関係、および、2.枝分かれ曖昧構造を持つ名詞句の理解に韻律情報および視覚文脈が及ぼす影響について、の検討に絞って、5歳児および4歳児を対象に実験を行った。 この結果、1.複合語の予測実験については、5歳児は6-7歳児と同様に、成人よりは若干タイミングが遅れるものの、アクセント変化の情報を複合語構造の予測に用いていることを示す結果が得られた。その一方、成人話者のオンライン理解には影響を及ぼさなかった音響的な特性(複合語構造の前部要素において、単独名詞に比べてピークおよび平均F0が高い傾向があったこと)が刺激の解釈を妨げる方向で作用していることがわかり、このしくみが検討課題として残された。さらに4歳児を対象にした実験では、アクセント変化による予測的処理を示唆するような条件間の差は見られなかったことから、複合語予測処理に関しての年齢的な指標についての一定の手掛かりが得られた。 2.枝分かれ曖昧性構造の処理に関しては、まず行動データ(最終的な解釈を示す、ターゲット選択結果)において、全体的なバイアスに経年変化があることがみられたため、視線データの検討と合わせて、個人差などを考慮した詳細な検討を行っている。 ここまでの成果は、国内外の国際学会複数で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なる年齢層の子供を対象に、4件の実験を行い、また分析済みのデータを速やかに成果発表につなげることができたことから、実験の遂行という観点からは研究は計画された範囲を超えて順調に進展していると考えられる。ただし成果発表については、本務校の業務の関係で、計画通りに行うことができなかったため、発表予定の一部を翌年に繰り越す必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度、研究成果のすべてを発表することができなかったため、本年度はより議論を深め内容を充実させたものを国際学会で発表し、またあわせて投稿論文も完成させる。
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Causes of Carryover |
前年度成果発表を予定していた国際学会が、本務校の入試業務の日程と重なってしまったため、成果発表を翌年の別学会にて行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会での成果発表および、今後の共同研究の展開のための共同ワークショップ開催を検討する。2016年9月に行われるAMLaP、もしくは2017年3月に行われるCUNY Conference on Human Sentence Processingを視野にいれて投稿準備をすすめる。同時に、8月に今後共同研究を行う予定のUniversity of Hawaii において、共同ワークショップを行うことも検討している。
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