2014 Fiscal Year Research-status Report
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25580099
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
長崎 靖子 川村学園女子大学, 文学部, 教授 (60419794)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 三馬蔵書印書 / 三馬の識語 / 仮名字体 / 三馬所蔵『五色賦』 / 半濁音符 / 三馬自筆『式亭雑記』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画として掲げていた内容は次の通りである。 ①三馬自筆『式亭雑記』の調査 ②国立国会図書館所蔵の三馬蔵書印書の整理 この内、②国立国会図書館所蔵三馬蔵書印書に関してはほぼ調査が終了した。国会図書館所蔵の三馬蔵書印書の中で、三馬の識語が記されたものは18冊あった。この三馬識語に関しては活字化し、その中で使用されている仮名字体の調査を行った。本成果に関しては)「式亭三馬の蔵書―国会図書館所蔵三馬蔵書印書を中心に―」『川村学園女子大学大学院研究年報』第4号(2015.3刊行で報告を行った。 また、国会図書館の三馬蔵書印書の調査の中で、三馬と唐話の関係を示す書『五色賦』を発見した。『五色賦』の後半部分には岡島冠山の『唐話纂要』から抜粋された唐話が記述されている。この『五色賦』の唐話の脇には唐音が片仮名で記されている語が見られ、その中には「サ゜」や「テ゜」「モ゜」等の特殊な半濁音符の表記が観察できる。三馬も著作の中でサ行やカ行、タ行に半濁音符を使用する用例が見られる。先行研究ではこれらの半濁音符の表記には唐話の影響が考えられるとしているが、実際に三馬がこのような唐音表記の唐話が記述された書を所蔵していたという事実は、三馬と唐話との接点を深めることになるだろう。本成果に関しては川村学園女子大学国際日本学研究所主催の研究会(2015.12開催)で「式亭三馬の言語描写―三馬蔵書印書の調査から―」という題目で口頭発表を行い、さらに「式亭三馬所蔵『五色賦』所収の唐話に関して」『川村学園女子大学研究紀要』第26巻1号(2015.3刊行)で報告した。 ①の三馬自筆『式亭雑記』に関しては、三馬自筆の仮名字体調査の一環として翻刻を進めている。この成果に関しては来年度発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 国立国会図書館所蔵三馬蔵書印書に関してはかなり整理が進んでいる。本成果は『川村学園女子大学大学院研究年報』第4号に報告した。また国会図書館所蔵の三馬蔵書印書の中で、唐話が記述された『五色賦』の調査を行い、『五色賦』の唐話が岡島冠山の『唐話纂要』からの抜粋であることを見出した。本成果は、川村学園女子大学主催国際日本学研究所での口頭発表、並びに『川村学園女子大学紀要』第26巻1号で報告した。 さらに三馬自筆本『式亭雑記』の調査も進み、仮名字体での翻刻がほぼ終了している。 以上の点から2年度の目的はほぼ達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
三馬自筆本『式亭雑記』に関しては、通常の翻刻と共に仮名字体での翻刻(字母翻刻)を完成させ、紙面にて発表する予定である。また、自筆本の仮名字体の特徴を分析し、三馬の版本の仮名字体との比較を行い、この結果を口頭発表や紙面にて報告したいと考えている。 三馬蔵書印書に関しては、今回国会図書館所蔵『五色賦』の調査により明らかになった三馬の言語描写と唐話語彙との関係を、さらに三馬の著作及び唐話辞書の調査から具体的に導き出したいと考えている。
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