2014 Fiscal Year Research-status Report
Oxford & Cambridge Unionsの討論に見る英語の論述表現
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25580105
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
崎村 耕二 日本医科大学, 医学部, 教授 (50162326)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 本題の導入 / ズームイン / ズームアウト / ethos / pathos / エラスムス |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に,初年度において,OUS & CUS におけるディベートのスクリプトを起こし,英語の修辞・論理表現を考察したが,本年度はその際に作成した文書の整理と吟味を行った。特に次の2点を着眼点として設定することとした。(1)本題の導入方法に一定のパターンがあること。(2) 本題の論究に一貫性と統一性を与えるために,全体構成と小区分との関係を明確にするマーカーの効果的使用,等が行われること。(3) 弁論(特に主張)を押し付けがましくしないための一定の言語的抑制をもった修辞的表現が用いられること。さらに,討論における英語表現の具体的項目として,次のものをリストアップし,上記のスクリプトを材料として,吟味した。(1) 隠喩によるイメージの導入, (2) 理知への訴えかけ, (3) 情感への訴えかけ,(4) 頭韻等,音の効果を狙った言語使用,(5) 個人的経験への言及と一般論とのギャップがもたらす視点の転換,(6) 反復がもたらす効果と逆効果,(7)用語の意味範囲の拡大と限定がもたらす発見の効果,(8)非難のための言語表現とそれがもたらす効果。 第二に,研究計画の三番目に掲げていた古代ギリシャ・ローマにおける討論技法に関する研究を十分に行ったうえで英語の論述表現の研究を開始すべきとの反省から,文献目録の充実と文献の購入に取り組んだ。また,古代ギリシャ語,ラテン語の知識は必須であることから,古典語の参考図書を購入し基盤的な研究態勢を整えた。なお,エラスムス(Erasmus )のCopia: Foundations of the Abundant Style (1512)を当初の研究計画には含めていなかったが,研究の途上でその重要性を認識したため,ヘンリー・ピーチャムの著作とともに,本研究の基礎をなすものとして,調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヨーロッパの伝統的な弁論・修辞・論理に関する文献の調査がほぼ終了し,その意味で研究計画の大きな目的を達成することができた。調査の過程で,当初は視野に入れていなかったエラスムスの著作の意義を発見し,研究計画の調整を行った結果,近代以降の英語の論述表現を研究する上で,ピーチャムとともに主要な研究対象とすることとした。このような新しい発見があったことは一つの成果と言うことができる。 また,文献の収集という点では,古典語の基本的知識を得るための古典語の参考図書一式を入手した。しかし,古典語の性質上,十分な知識をわずか2年未満で習得することは不可能である。本研究は,今後の長期にわたる研究の基盤的態勢を整えたという意味で一定の成果を上げたと言うことができる。 なお,当初予定していたUnion Societyからの講師招聘に関する協議が進展せず,その結果,イギリス式討論の実際に関するOxford / Cambridge との意見交換等の見込みを立てることができなかった。そのため,イギリスの大学における討論の様式に関しては文献に頼らざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパの伝統的な弁論・修辞・論理に関して,当初は視野に入れていなかったエラスムスの著作の意義を発見したことから,近代以降の英語の論述表現を研究する上で,ピーチャムとともに主要な研究対象とすることとした。 英語の文献に関しては,さらにエリザベス朝関係の文献収集を進める。それと合わせてフランシス・ベーコンの論理・修辞と伝統的な表現様式の関係を探る。さらには現代英語との関連の可能性を考える。 最終年度の終結へ向けて,現代英語における論述表現および修辞表現に関して,学術研究分野(英語の論文と口頭発表)との関連づけを行いながら,高度な技法の細目にわたる項目整理を行う予定である。 なお,Union Societyからの講師招聘に関する協議に関して,3か月ほど働きかけをしたうえで,研究会の開催が最終年度終了時までに実現できるかどうかを決定する。実現できない場合には,文献調査と海外の研究者との通信により,一定の目標達成を目指す。討論の動画をさらに視聴し,スクリプトの作成および論理・修辞表現の分析・考察をさらに進めていく計画である。特に Richard Dawkins の弁論およびその関連動画を取り扱う。
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Causes of Carryover |
初年度の途中で所属機関が変わり本年度の研究計画がやや遅れたため,初年度からの繰り越し額とあわせて二年度目にも,次年度使用額が発生した。具体的にはCambridge Union Society からの講師招聘および打ち合わせのための旅費が,本年度中に使用できなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に行う予定であったイギリスからの講師の招聘あるいは打ち合わせ・調査のための旅費,研究会開催のための経費は,次年度に使用することとする。その結果,研究成果の統合のための経費とともに,すべての使用額は次年度に執行することとなる。
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