2014 Fiscal Year Research-status Report
海外の大学教員との連携を目指す協働的日本語ライティング教育開発のための調査研究
Project/Area Number |
25580113
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村岡 貴子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (30243744)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
因 京子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (60217239)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ライティング / 協働 / 社会への橋渡し / 論文スキーマ / 卒業論文指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、海外の大学、具体的には中国とタイの大学教員との研究交流、およびタイの大学での実験授業の実施と学生への調査を行った。 まず、上記の2地域において、当該地域の大学で大学・大学院レベルで日本語教育や研究指導に従事している5名の教員からデータを得た。当該教員からは、学部と大学院での日本語教育、特にライティング教育、卒業論文指導や進路等について情報を得た。本研究で調査協力を得た研究者を通して得た情報の主要な点をまとめると、1) ライティング授業が、日本人講師にほぼ任せられており、必ずしも、そのシラバスがライティング以外の授業とカリキュラム内での連携がなく独立している、2) クラスサイズが大きい中での個々の学習者の文章に対する添削の負担が大きい、3) 卒業論文執筆以前の指導が少ない上、執筆期間が短く、フィードバックが必ずしも十分ではない、4) 国・地域によっては、大学院生が少なく、日本留学経験者の学部生より日本語能力が低い場合も見られる、等、ライティング教育関連の問題が示された。 一方、代表者はタイの大学で学部生および大学院生の合計30名余に対して行った講演と授業においては、日本留学経験者もおり、日本語能力の差は少なくなかったものの、提示した課題をグループで検討する過程において、論文や研究とは何かの論文スキーマについて、一定の学びと気づきが確認された。クラスメートと協働で活動を行う文章の比較、分析、評価の課題は、現地で教鞭をとる教員との情報や意見の交換の際に高く評価された。今後は、より日本語レベルの低い学習者に対する教育においても、表現の工夫や訳の追加等で、同様の課題が活用できる見込みがあると考えられた。 最後に、前年度に実施した台湾での実験授業と調査についてまとめた論文が、当該大学の紀要に掲載され、また、前年度より執筆を行っていたライティング教育研究の専門書が刊行された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定に示したように、大学での調査としての実験授業や、教員への調査、さらには、論文スキーマ形成にかかわるライティング教育の方法論についての研究上の交流が行われ、国と地域は限定的であるが、一定の知見が得られた。また、ライティング教育の担当者が日本語母語話者か否かについても、興味深い知見が得られ、特に日本留学経験者の非母語話者の教員による貢献の高い可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
調査する大学と協力が得られる教員を増やし、今後ライティングの授業や卒業論文指導の事前教育を企画・実施する予定の教員、および今年度、先方の都合で調査が実施できなかった大学からもさらに情報を得て、研究を推進したい。また、特定の複数の地域であっても、ライティング教育の課題は、教師や学生だけでなく、カリキュラムや大学の制度の関係で、改善や解決が迅速には困難な場合もあるため、さらに、教育の環境や種々の条件を十分に精査して見極める必要がある。調査内容を拡大するより、むしろ、これまでの研究成果を総括し、その上で、海外の当該教育をめぐる国・地域ごとの事情を把握し、当該教育担う関係者との密な連絡、さらなる意見交換を進め、海外と日本との間での、継続的な高等教育を行うための具体的なライティング教育方法の開発を目指す方向性を探りたいと考える。
|
Causes of Carryover |
分担者の本務の都合により、出張の回数が変更され、若干の費用に残高が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は最終年度であり、最後の調査、および成果発表等の機会があり、旅費が必要であるため、生じた残高分をすべて活用する予定である。
|