2014 Fiscal Year Research-status Report
タンデム学習を行う日本語学習者の学びの諸相に関する探索的研究
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25580114
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 直子 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20184038)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンデム学習 / 対面式タンデム学習 / 第二言語としての日本語 / 学習者オートノミー / 自己主導型学習 / 言語コミュニケーション能力 / 会話分析 / 教室外の学び |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、タンデム学習における学びの諸相を探索的に分析することである。そのために、対面式タンデム学習を行う英語学習者と日本語学習者のペアの学習活動を録音し、その日本語学習活動部分のやりとりを、ヨーロッパ共通言語参照枠の理論的枠組みにそって分析し、どのような事柄が学ばれているのか、日本語話者であるパートナーはどのように学習者を助けているのか、また学習者はどのようにしてパートナーから助力を引き出しているのかを明らかにしようとしている。 3年にわたるプロジェクトの2年目である2014年度は、データ収集を継続するとともに、2013年度に収集したデータの暫定的な分析を、本研究以前に行ってきたタンデム学習に関する研究成果に統合する形で、Independent Learning Associationおよび国際応用言語学会(AILA)の2つの学会の大会において発表を行った。前者は長期的に見たタンデム学習の効果を過去のタンデム学習参加者へのインタビューにより明らかにしたものであり、後者はタンデム学習の参加者がパートナーの学習の助け方を学ぶ過程を明らかにしようとしたものである。 さらに2015年8月には、カナダ日本語教育振興会の大会において、基調講演「21世紀の言語学習;拡大する地平、ぼやける境界、新たな可能性」を行うが、この中で、タンデム学習が可能にする教室外での学びについても触れる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度、1年目の調査がやや遅れた原因として、研究対象者の都合で計画通りの回数のデータ収集ができなかったこと、また、日本語学習活動中に主として英語を使っているペアがあり、英語データの質の高い文字化ができる業者がいないという問題を挙げた。これらの問題は解決していない。 本研究は縦断的ケーススタディとして、1組のペアに10回のセッションの録音を提供してもらい、3組の調査を行う計画だったが、同一のペアの10回分の録音データを収集することは現実的に難しいと考え、複数のペアから可能な限り多くの回数の録音を提供してもらうという方針に切り替えた。本年度は、複数のペアから合計20回程度のセッションの録音データを収集したいと考えていたが、研究に協力してくれるペアの確保が容易ではなく、2組9回分のデータが収集できただけである。 参加者が調査協力を断る原因は、タンデム学習が教室外で行われる活動で、参加者はそれをプライベートな空間であると認識しているため、その場のやりとりの録音を研究データとして提供することに抵抗があるということがわかってきた。それ自体が研究成果であるとも言えるが、データ収集を進める障害であることは間違いない。しかし、この問題に関しては、研究の目的や意義を説明し、協力してくれる学習者を探し続けるしか対策はない。 さらに、英語データの文字化は業者が無料で「やり直し」をしてくれたが、やはりそのまま分析に使えるものではなく、現在は、研究者が録音を聴き、特徴的なやりとりであると判断した部分のみ、自分で文字化している。非常に時間がかかり、今年度に収集できたデータにも英語が多用されていたこともあり、分析の作業が遅れている。しかし、日本語学習の時間に英語を使うケースが多いらしいということがわかったことは成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度前半に、英語および英語以外の言語を学習する日本人学生と、そのパートナーに協力を依頼し、数組から合計10回から15回程度のセッションの録音データを収集したい。英語以外の言語を学習する日本人学生にも協力を依頼するのは、以下の3つの理由である。まず、日本語学習の時間に英語を使うのは、英語を話す能力が日本人学生にあるからである。英語以外の言語であれば、そこまで能力が高くない場合も多いので、日本語学習の時間にその言語を多用することはないだろうと予測できる。日本語が主たる言語であれば、信頼できる文字化をしてくれる業者があるので、データの分析に研究者が割かなくてはいけない時間が減る。また、最終的な文字化のチェックも大学院生のアルバイトに依頼することができるため、研究者が分析自体に時間をかけることができるようになる。 また、これまで収集したデータとは異なるタイプの学習活動のサンプルを収集するという意味でも、日本語学習の時間に主として日本語を使っているペアのデータを収集することに意味がある。 さらに、録音データ提供の依頼は、研究代表者の勤務先の大学でカリキュラム外の活動として組織しているタンデム学習プロジェクトへの参加者に行っているが、日本語学習者の母語あるいは得意な言語を英語に限定しないことで、研究協力を依頼できるペアの数が増える。 データを提供してくれるタンデム学習参加者の確保は、授業であれば、評価の一部として録音データの提出を求め、それを研究のために使う許可だけとればよく、そういう形であれば、おそらく研究協力は得やすいだろうと思われる。しかし、上述のように本研究の対象はカリキュラム外活動であるため、データ提供を強制できない。地道に誠意を尽くして説明し、説得していくしかない。
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Causes of Carryover |
「現在までの達成度」の項に書いたように、データの収集が計画通りに捗っていないこと、収集したデータの中に業者に任せられないものが多く、研究者が作業をしているため文字化経費が発生していないことが、次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「今後の研究の推進方策」の項に書いたように、今年度は、計画を変更して、引き続きデータの収集を行う。昨年度から繰り越した金額は、データ文字化、および、文字化チェックのために大学院生を雇用する経費に充てる。
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Remarks |
これは研究代表者が所属研究機関において立ち上げたタンデム学習プロジェクトのホームページである。参加者の学生向けのページは、タンデム学習とは何かの説明と、タンデム学習をうまく利用するための注意事項、また参加者向けのワークショップの報告等が掲載されている。教育関係者向けのページには、このプロジェクトの改善のために行ってきた調査・研究に関する学会発表等のデータ、参考文献リスト、リンク集が掲載されている。
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Research Products
(4 results)