2016 Fiscal Year Annual Research Report
Forensic Linguistics: Its Application to Japanese Judical System and ESL
Project/Area Number |
25580125
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
兼元 美友 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 准教授 (90362095)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文字結合商標 / 複合語主要部 |
Outline of Annual Research Achievements |
商標とは、商品やサービスに付されている文字・図形・記号・立体的形状・色彩・音やそれを組み合わせたマーク(標章)のことであり、自己の商品・役務と他人の商品・役務を識別する機能を有する。商標に関してよく生じる紛争として、2つの商標の類否の問題がある。商標の類似とは、対比される両商標が同一・類似の商品に使用される場合に、出所の混同を生じるおそれがあるかどうかによって判断される。 通常、類否判断は、対比される両商標の全体を観察して行われることが原則とされるが、ある商標の中で、取引者または需要者の注意を引く部分を要部とし、その部分を抽出して観察する要部観察が行われる場合がある。判例からは、当該結合商標において、「要部のみが出所識別標識として機能する」ことが求められているように読み取れるものの、その基準は明確ではない。 そこで、本年度は、文字結合商標の類否を検討する際に必要な判断基準を明確にするための第一歩として、言語学における複合語とその主要部(Head)の概念を活用して、類否判断の基準を捉えなおす試みを行った。複合語の主要部(Head)は自他識別力を持たないため、「複合語の主要部(Head)以外の要素が文字結合商標の要部である」という仮説を立て、検証を行った。 合わせて、類似の判断が下された例の中には、本件商標が内心複合語の構造をとっており、その内部構造が「引用商標(暗示的、恣意的、意匠的名付け)+主要部(Head)」である場合が非常に多いことを指摘した。それはつまり、引用商標の要部全体がそのまま使用され、それに主要部を付加しただけの本件商標は認められない、という判断がなされるケースが多いことを意味している。むしろ、その判断をするために、要部観察という手法が生み出されたものと考えるのが自然であることが確認できた。
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