2013 Fiscal Year Research-status Report
最新音声情報処理技術を活用した即応力を高める音読・英会話の自動評価システムの開発
Project/Area Number |
25580135
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
山内 豊 東京国際大学, 商学部, 教授 (30306245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 惠 東海大学, 外国語教育センター, 准教授 (10453705)
川村 明美 東京国際大学, 言語コミュニケーション学部, 准教授 (30326996)
染谷 泰正 関西大学, 外国語学部, 教授 (40348454)
HUSKY Kay 東京国際大学, 商学部, 准教授 (50237955)
峯松 信明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273333)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 音読 / 英会話 / 評価 / 正確性 / 発音 / 流暢さ / 発話速度 / 熟達度 |
Research Abstract |
実践的なコミュニケーション場面では,相手の意図を迅速に把握して対応できる即応力が重要である。即応力を高めるには,応答するまでの反応時間を考慮し,外国語で聞いたり話したりすることが,できるだけ自動的にできるようになるまで,聴解や発話の練習の量を増やすことに配慮する必要がある。しかし,従来の日本の英語教育では,文法構造や日本語訳などの正確性や質を重視してきたため,即応力を高める反応時間や量に対応する教授法や教材は,ほとんど開発されてこなかった。この結果,一般の日本人英語学習者の即応力はたいへん不足しており,国際会議での議論や質疑応答等で円滑な意思伝達ができないことが多い。 最近になって,外国語を読んだり聞いたりするときの処理速度を高めることが重要であることが唱えられるようになり,音読やシャドーイングの重要性が認識され始めている。音読では,並んだ単語群を意味のまとまりごとに区切り,適切な強勢弱勢を配置することでリズムを作り,内容に合わせたイントネーションを用いて読み上げる必要がある。このように,音読は文字を音に置き換えるだけの単純作業ではなく,学習者が音韻・統語・意味・語用的な知識を統合して,文章を音声化して発話していく練習である。従って,音読練習を効果的に行うことで,読解力だけでなく,発話力を統合的に伸ばせる学習法として大きな可能性をもっている。 本年度は,同じ英文を繰り返し音読することによって,学習者の即応力がどのくらい高まるかについて調査を実施し,英語熟達度によって繰り返しの効果が異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,同じ英文を繰り返し音読することによって,日本人英語学習者の音読パフォーマンスがどのくらい向上するか,および,英語熟達度の高い学習者と低い学習者では,繰り返しが音読に与える影響にどんな差異が出るかについて,正確性と流暢さに着目して,以下のような結果を明らかにすることができたため。 TOEICで読み手の総合的熟達度を測定し,熟達度の異なる読み手にとって初見の英文パッセージで206語からなる音読用パッセージを5回繰り返して音読してもらった。各音読の終了後,合計2回,音読パッセージの概要・要点に関する選択肢式の内容理解問題を課して,音読した内容がどのくらい頭に残っていて,空読みになっていないかも確かめた。 繰り返し5回音読した音声について,音声情報処理手法として,発音の正確性(accuracy)については,GOP(goodness of pronunciation)を使い,流暢さ(fluency)については発話速度を使って,客観的な評価を行った。 分析の結果,英語熟達度の高い学習者の場合,繰り返しの回数が上がるほど,発話速度が上昇し,パッセージの意味内容理解も回数を重ねると深まっていくことがわかった。音読を繰り返すにつれて,パッセージの内容について感情を込めて相手に読み聞かせようという音読に変容していく様子が観察された。発音の正確性を示すGOPは最初から高い値をとっており,5回音読を繰り返す中で,大きな変化は見られなかった。内容理解問題も第一回目は全問正解ではなかったが,2回目には全問正解できた。 一方,英語熟達度の低い学習者の場合は,初回から5回目までの音読について,発話速度もGOPの向上はあまり見られなかった。英文の内容理解は,第一回目が全問正解できなかったばかりか,第2回目の音読の直後では内容理解問題の正答率が落ちる現象が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施した調査から,音読パフォーマンスは,読み手の総合的熟達度をよく反映することがわかった。これは,音読は文字を音声に置き換える単純作業ではなく,音韻知識・意味知識・統語知識・語用知識などを組み合わせて使って,文字情報を音声化し発話していく統合的な言語活動である。即ち,心的辞書に格納された語彙知識を使って単語認識し,単語群を適切な意味のまとまり(sense group)ごとに区切り,意味内容に合致するように,強勢を置く単語と弱形で詠む単語を識別し,適切なイントネーション・パターンを選択して,音声化して発話していく必要がある。さらに,入力される文字情報を処理しながら,話の流れを理解するために意味的に重要なポイントを一時的に記憶・保持し,理解した内容に基づくプロソディック分析を行いながら,発話プランニング(planning)を進め,音声発話していくという,複雑な認知処理を同時並行処理で行う必要があり,作動記憶(working memory)を効果的に使うことが要求される,認知負荷の高い言語活動といえる。このため,音読パフォーマンスは読み手の総合的熟達度を反映することになると考えられる。 音読における繰り返しの効果が出るには,読み手がある程度の英語熟達度をもっている必要があることもわかった。英語熟達度が低い読み手の場合には,5回繰り返しても向上は見られなかったため,音読を改善させるためのヒントや指導が必要と考えられる。 今後は,このようなヒントを考慮して,組み入れる形で,音読の自動評価システムを構築し,英語の即応力の伸びを検証していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本人英語学習者の音読の自動評価の方法とその方法論を取り入れたプログラミングについて,自動評価システムの仕様を決定するのに,今までの調査結果を分析して,それらをプログラムに組み込むために時間を要したため,本格的なプログラミングとその謝金は次年度送りとなったため。 日本人英語学習者の音読の自動評価について,評価方法に関する文献購入費,発音の正確性と発話速度の測定を自動的に計算してフィードバックするプログラミングを音声処理の専門家に依頼しその謝金に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)