2013 Fiscal Year Research-status Report
可能性としての口述資料-『被爆者の声』の確定と公開-
Project/Area Number |
25580151
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
今野 日出晴 岩手大学, 教育学部, 教授 (10380213)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 被爆者 / オーラル・ヒストリー / デジタルアーカイブ / 聞き取り / 証言 / 口述資料 |
Research Abstract |
本研究は,故伊藤明彦氏が,採録した「被爆者の声」(国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館及び「NP0法人 被爆者の声」)1,352名の録音データ (原テープと証言ビデオ)及びそれらに対応した被爆者名簿,整理簿などの一次資料を対象に,悉皆調査をおこない,総目録を作成し,他の文書資料と照合しながら,一つの資料群として確定することを目的としている。平成25年度は,長崎調査(第1次:平成25年8月,第2次:平成26年2月)において,国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館及び「NPO法人 被爆者の声」に所蔵の録音データ及び一次資料(整理簿,葉書・書簡類,体験記等)の調査をおこなった。また,伊藤氏が「被爆者の声」の収録活動をおこなう以前に,ラジオ番組「被爆を語る」の担当であったことから,第2次調査の際には,NBC長崎放送でも被爆者整理簿などの調査や関係者への聞き取りをおこなった(同時に,NBC長崎放送からの取材を受けた)。故伊藤氏の採録された「被爆者の声」及び一次資料は,膨大なものであり,調査は未だ途中であるが,国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館所蔵の分については,簡易な「被爆者整理表」を作成し寄贈した。また,「被爆体験記」などでクロスチェックをおこなうことを目的として,平成26年1月には,広島調査の予備視察をおこなった。また,成果の中間的な発表としては,平成26年1月25日に,愛媛大学教育学部GP「領域横断型フィールド調査に基づく『文化的平和』の理念に関する教育実践研究-長崎から『人間の復興』を考える-」において,「可能性としての口述資料-『被爆者の声』の意味と意義-」と題して招待講演をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2度にわたる長崎調査にも関わらず,研究の目的及び計画に照らして,やや遅れている。それは,故伊藤氏の採録された「被爆者の声」及び一次資料が当初想定していたものよりも膨大であったことが最も大きな理由である。国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館所蔵の「被爆者整理簿」などの一次資料は,個人情報保護の観点から,複写することができず,現地調査に限定されているために,特に,分析の作業が計画通りに進んでいない。また,調査が進むにつれて,調査対象の拡大が必要となっている。NBC長崎放送での資料調査や聞き取りの追加もその一つである。また,他にも,「NPO法人 被爆者の声」所蔵の「被爆者整理簿」がまとまって長崎に保管されているのではなく,東京にも保管されていることが判明し,今後の追加調査が求められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,当初は,まず,口述資料「被爆者の声」の総目録と作業用データベースの作成,次に,録音データ(原テープ・ビデオ)・音声作品の分析と「被爆体験」の文字資料による検証という二つの柱を軸に研究計画を組んでいたが,調査の対象の増加に対応するために,一定の見直しが必要となっている。そこで,何よりも,前者の口述資料「被爆者の声」の悉皆調査と総目録の作成を第一義的な課題として,前年度繰り越した助成金を活用して,調査期間の延長,調査人数の拡大などによって対応する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査対象の「被爆者の声」に関する録音データ (原テープと証言ビデオ)及びそれらに対応した被爆者名簿,整理簿などの一次資料が膨大であり,さらに,調査対象の増加(NBC長崎放送保管の被爆者整理簿,「NPO法人 被爆者の声」の東京スタッフが保管している録音データ)などが重なり,やや計画通りの進捗とはならなかった。平成26年度の調査旅費等に支出することを想定したことによる。 当初の計画では,平成26年度は,長崎・広島各1回の調査の予定であったが,前年度の差額を活用して,長崎2回,広島1回の調査を計画する。差額は,長崎1回分の調査旅費に該当する。
|