2013 Fiscal Year Research-status Report
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25580152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
麓 慎一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30261259)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水産業 / 中国 / 朝鮮 / 日本 / 毛皮獣 / 報效義会 / 水産博覧会 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成25年度における実績としては、以下の二つをあげることができる。第一は、中国の大連・営口などの地域における漁業資料の調査を行うことができたことである。特に、中国海洋大学の研究者の協力を得て、営口についての漁業資料および税関資料を収集することができた。これらによってロシア産昆布の大連などへの流入についての知見を得ることができた。また、朝鮮人のこれらの地域への流入について新たに知見を得ることができた。平成25年度の調査では、それらの朝鮮人が漁業に従事していたのか否かを確定することはできなかったが、水産業の国際的な協業の関係を新たに解明する視点を得ることができた。第二は、これまでの中国における調査を踏まえて、「清国における海産物市場の形成と市場情報」として論文を上梓できた。これは広業商会の崩壊に際して、北海道庁が中国(大連・上海・営口など)の昆布市場を調査して、新たな水産業政策を立案するための情報を収集した過程を「鹿島万兵衛文書」を中心に検討した論考である。これにより、中国市場におけるロシア産昆布の流入の動向を北海道庁が理解した上で、新たな政策を立案したことを解明した。これは、日本昆布会社の設立につながるが、この点を次に解明する手掛かりも得ることができた。 以上の二点が大きな成果であった。これに加えて、平成26年につながる以下のような成果もあった。第一に、サハリン島や沿海州地域における日本人の漁業についての情報を得ることができた。日清戦争後におけるロシア沿海州の日本人漁業者が日露戦争の勃発の噂に混迷するなど、これまでの研究では明らかにされていない内容が記された資料を入手することができた。第二に、ロシア沿海州における日本人漁業者の排除についてのロシア側の資料をロシア国立極東文書館において筆写することができた。この二点の成果は、平成26年の研究につながる成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年に中国における調査を行えたことで、日本と中国の水産業の協業の関係について解明する手掛かりを得ることができた。また、ロシア国立極東文書館において日本人の漁業者を排斥する資料を閲覧して筆写することができた。これらの知見をさらに深化させることで本研究課題を十分に達成できる予想が立った。平成25年において十分とはいえなかった点は、韓国の研究者との関係を十分に形成できなかった点である。中国海洋大学の研究者の協力で中国と韓国の漁業関係についてレクチャーを受けることができたが、実際に韓国の当該分野の研究者との関係を形成する必要があると考えている。この点が達成できれば、「当初の計画以上に進展している」という評価を与えることができると考えている。平成26年度はこの韓国の研究者との関係を形成したい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、中国海洋大学と韓国の国立民俗博物館の研究者を招へいして日本で研究会を開催する予定である。これによって中国・韓国・日本の水産業の協業の関係を解明する。この研究会で大幅に研究の進展がみられる、と認定できた場合には、「挑戦的萌芽研究」から「基盤研究」などに研究の規模を拡大していきたいと構想している。また、これまでの水産関係の雑誌の分析などから、水産業の協業の関係がヨーロッパ、特にドイツやフランス・アメリカ合衆国などに影響されていることが分かった。この点について、さらに研究を深化させていたいと構想している。具体的には、水産博覧会などによって水産関係の技術や加工方法などがヨーロッパからアジアに流入することが分かった。これが具体的に中国・日本・韓国の水産業に与えた影響を解明することで、ヨーロッパとアジアにおける水産業の連関を解明できたならば、研究は当初予想していたアジア内部の水産業の連関を解明する以上に、立体的に解明できると思われる。この点からも研究の規模の拡大化が必要である、と考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中国における現地調査のために予想以上に経費が必要となったため前倒しで平成25年度の経費を使用した。 当該残金については、平成26年度に日本において予定している国際研究集会において使用する予定である。また、平成26年度の経費が不足する場合には、さらに前倒しするなどの措置を講じる予定である。
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Research Products
(2 results)